更新日:2022.03.16

リハビリは個人の症状に合わせたプログラムが重要

脳卒中(脳梗塞・脳出血)やパーキンソン病、脊髄損傷などは全て神経系統が障害を受けることによって生じる病気です。

これらの病気は運動麻痺や感覚障害だけでなく、意識障害や記憶の問題などを含めた高次脳機能障害を引き起こすことがあります。

中枢神経はかつて、”ブラックボックス”と言われその機能ははっきりと解明されていませんでした。今でもすべての機能が解明されたわけではありませんが、多くの事がわかってきました。

中枢神経の各部分によって司る機能が異なっています。もしくは、2つ以上の部位が関連しあって機能をになったりしているということもわかってきました。

この記事では、中枢神経の部位ごとに担う機能を簡単に説明しています。それぞれの部位が何をしているのかを理解するとリハビリを行う上で中止しなければならない点がわかりやすくなると思います。

中枢神経には役割分担がなされている。

中枢神経は2つの大脳半球と間脳、脳幹、小脳、そして脊髄によって構成されています。それぞれは独立した役割を持つとともに全体として同じ目標に向かって効率よく機能を遂行できるように調整しあっています。これは解剖学的な(構造上の)分類であって、機能的な分類とは異なっています。

例えば、右手の人差し指を動かすためにどのような情報処理が脳内で行われているのかはとても興味深いものがあります。

右ての指の動きは、左の大脳半球にある運動野からを伝達される指令によって実現されています。この指令の生成過程はとても複雑で、単純に指を動かすだけでなくその際の姿勢や感覚などの処理も同時に行われています。つまり指一本を動かすために、運動野だけでなく中枢神経内の多くの部位が関わっています。

大脳

2つの半球からなり、深く溝の入った外層(大脳皮質)と深部にある構造物(基底核、海馬、偏桃体)が各半球にあります。それぞれの部位(大脳皮質、基底核、海馬)は神経細胞の集合体で、その他の部位はそれらを結びつける神経の線維(伝導路)があります。

そのため、神経核が損傷するとその部位が司っている機能が失われてしまいます。運動野が損傷すれば、運動の出力が困難になり運動麻痺がおこ也ます。しかし、この運動野から出た神経の伝導路が手足に到達するまでに損傷すればやはり同様に運動麻痺が出現するわけです。

間脳

中脳の上にあり視床と視床下部を含みます。視床は大脳皮質以外の中枢神経系から大脳皮質に到達する情報のほとんどを処理し、視床下核は自律、内分泌、内臓機能を制御しています。

小脳

脳幹の後ろ側にあり運動の強さや範囲を調節し運動技能の習得に関与しています。このため、小脳の障害ではバランス障害や運動の手順を覚えることなどが苦手になることがあります。

脳幹

中脳、橋、延髄を合わせて脳幹といいます。それぞれの部位が担う役割は以下の通りですが、脳幹には神経細胞の集合体である脳幹網様体があります。この神経核群は感覚信号が大脳に向かうときに通過し、意識を覚醒状態に保つ役割があります。

中脳

目の動きや視覚、聴覚に関与し多くの運動、感覚機能を制御しています。中脳の中にある黒質はパーキンソン病の責任病巣としても有名でこの部位の障害は、動作緩慢や筋肉の硬さ、手足の震え(振戦)を起こします。

耳(鼓膜からの音と三半規管から加速や傾き)からの情報を処理する神経核があります。また、大脳からの運動に関する情報を小脳に伝えています。

延髄

呼吸、消化、心拍数の調整など重要な自律神経機能を担っています。また嚥下や舌の動きを司る神経核も延髄にあります。

脊髄

中枢神経のうち最も尾側にあり四肢や体幹の皮膚、関節、筋肉からの感覚を受け取って処理し、四肢(手・足)や体幹の運動を制御しています。

個々人に合わせたリハビリを!

障害部位によって生じる症状が異なり、症状に応じたリハビリが必要になります。

例えば、足が動かないという症状に対して原因である障害部位とその動きに関わるその他の部位との関係性が理解されなければリハビリの効率は落ちてしまいます。足が動けないことに対応する方法というのは無数にあり、どの方法が良いのかを見つけるのが療法士の役割になります。

私は、改善するために以下の6つの視点から考えてプランをたてています。

  • 感覚:足を動かすのに必要な感覚が入力される
  • 知覚:感覚した情報は中枢神経の中でイメージ化する
  • 認知:本人の経験・動機付けと合わせ運動の企画・計画をする
  • 運動:企画された運動を実行する能力
  • 感情:価値判断や記憶
  • 生態力学:関節や筋肉の構造

詳しくは中枢神経障害における問題点の考え方の記事にまとめていますが、おおざっぱに上記の通りです。

動かないからと言ってその原因が必ず運動の問題とは限らないのです。極端慣れでは動く意義を本人が理解していなければ動きませんし、どの程度動化したらよいのか認識できていなければ動き出せません。

これらの過程がうまく機能した時に初めて効率の良い動作が成立すると考えています。

まとめ

立てないから立つ練習、筋肉を鍛えるという短絡的な発想はもはや時代遅れのやり方です。もちろん、立てるようになるために立つ練習が必要なことは多く、その行為自体を否定するものではないのですが、今立つ練習をする理由が明確である必要があります。

出来ない理由はセラピストでないと見つけられないと思います。お困りのことがあれば担当の理学療法士・作業療法士に尋ねてみることをお勧めいたします。

この記事を書いた人

塚田 直樹
Rehabilitation Plus 代表 理学療法士として20年以上の経験 専門理学療法士・認定理学療法士・ボバースインストラクターとして年間50以上の研修会に登壇している