2021年最新:脳卒中のリハビリ(歩行)を解説します

最新の神経学的背景にあわせて、ヒトの二足歩行獲得に向けたリハビリのモデルプランを考えました。

歩行回復のリハビリを行うときに何をしたら、何から始めたらよいか戸惑う方が多いと思います。

ここでは、脳卒中片麻痺の方を想定し歩行改善のための介入をまとめています。

この記事を読むことで、歩行の神経学的背景を理解して歩行の改善に向けたリハビリプランを立案できるようになります。

歩行のための準備

歩行練習と言ってもいきなり歩く練習が成立するとは限りません。

歩くために必要な準備がいくつかあります。

ここはいくつかの側面を書いていますが、この順番通りでなくとも大丈夫です。すべての要素がそろう必要があります。

姿勢制御

歩行中Passenger(骨盤から上の上半身)はLcomotor(骨盤を含む下肢)の上で安定している必要があります。

そのためには体幹のみならず、頭部(目・半規管などの重要な特殊感覚器をもつ)・首や上肢が独立して動けることも重要です。

“パッセンジャー"は基本 的に自分の姿勢保持にのみ責任をもつ。このため歩行の正常メカニズムは,“ パッセンジャー"への負荷が最小限になれば性能がよい といる。 “パッセンジャー"は “ロコモーター"に よって運ばれる自立した単位でないといけない。そのことによって “パッセンジャー"は,前方への移動に依存することなく上半身や腕(も しくは手),頭 を用いた各種の活動(multi task;重 複課題)を 行うことができる。

キルステン ゲッツ・ノイマン(原著) 観察による歩行分析, 2005

歩行中の姿勢制御は体幹が伸展し、COMが高い位置にある必要があります。

なぜなら、COMが低い位置にあるということは体のどこかが屈曲していることを意味しますが、同時にAlignment(身体配列)がまっすぐでないことを意味します。

つまりパッセンジャーが姿勢保持のために効率的な筋活動などの状態でないわけで、Initial Contactの衝撃吸収において、股関節、体幹の伸展が起こりにくくなります。

歩行速度がある程度早くなると上肢の振り(Swing)が見られますが、体幹が鉛直方向に伸びた状態での体軸内回旋が必要です。

感覚ー運動連関

足(踵)がついたら即座に筋活動が起こり、下肢が支持を行います。

これは、踵の皮膚が歪むときに生じる皮膚感覚や筋の伸張によるものです。

多関節運動連鎖と呼ばれている現象がありますがここでは運動の連鎖だけでなく、感覚情報が運動に変換される全過程を考える必要があります。

末梢感覚器(皮膚・筋紡錘・腱紡錘)、求心性繊維、中枢神経(脊髄・脳幹と思われます)、遠心性繊維、効果器としての骨格筋を含めてみる必要があります。

目には見えないので、動き、筋収縮などを見て判断が必要です。

歩行場面での練習

歩行周期に照らし合わせた分析が歩行の全体を網羅し手捉えることに重要です。

歩行の分析は、歩行という一つの行為を分析する必要があります。中枢神経は歩行全体を一連の動きの組み合わせとして表現しています。

つまり、右足が重く振り出しにくいという状況があるとすれば、即座に左下肢や体幹でその代償活動がおこるわけです。

麻痺側だけでなくその時の反対側の動きや、HATの分析も重要になります。

片麻痺者からよく聞かれる”(麻痺側の)振り出しができない”ということをこれに合わせてみてみると、一側がPSwの時反対側はIC~LRということになります。

非麻痺側股関節が屈曲から伸展方向へ、そして体幹が上に伸びあがっていく活動がなければこの”振り出し”は成立しません。

両脚支持での体重移動

また、歩行周期の役20%が両脚支持期(Doubule Stance Phase)となっています。

この両脚支持期では、荷重の受け継ぎが行われます。麻痺側から、非麻痺側へあるいはその逆という風になります。

両側下肢のみならず、体幹・頭頚部の伸展(側屈しないこと)が保てているかも忘れてはなりません。

スピード・リズムの経験

Doubule Stanceでは体幹の回旋と上肢のSwingもおこりますが、この動きは健常成人の歩行においてはある一定(約2.4km/h) 以上の歩行速度 にならないと腕の振りは起こらないとされています。

健常成人の歩行様式を実現するためには、歩行速度を早くそしてリズミカルに歩く経験が必要になります。

まとめ

歩行を獲得するために必要な要素を書いてみました。それぞれの構成要因がそろうことで歩行の獲得に向けて前進すると思います。

今一度歩行分析から見直してみてください。