動きのしなやかさ、巧みさを取り戻す方法
脳梗塞や脳出血などの運動麻痺がおこると、運動が拙劣になります。
- 手を握ろうとすると、肘も曲がったり。
- 膝を伸ばそうとすると腰も反り返ったり。
運動の器用さが脳内でどのように作り出されているかをお話しします。運動麻痺などで、運動がぎこちない、遅い、弱いなどの解決に役立てばと思います。
例えば座って膝を伸ばす時に体が後ろに行ってしまうのは、膝を伸ばす筋肉と腰をそらせる(伸ばす)筋肉が別々に動かせないことにあると考えられます。
これを別々に動かすには脳内ではとても複雑なことが行われています。
運動の器用さと姿勢
人差し指を伸ばしてエレベーターのボタンを押すことを想像してみてください。
利き手の人差し指を伸ばす。
この時に動く筋肉は、指を伸ばす筋肉だけではないのです。
人差し指を伸ばすために他の指を曲げ、手首、肘、肩、胴体、首が動かないように安定させ、足がこれらを支えるために働いているのです。つまり全身の筋肉の活動を調整してたった一本の指を伸ばしているのです。一般的には動きを運動、動かない筋肉の働きによって作られる体の構えを姿勢というかと思います。健常な方では、運動の背景には常に姿勢があります。この2つは切り離すことができません。運動麻痺がある方が動作を行おうとするとこの組み合わせがうまくいかず全身に力が入ります。結果として動作の初動が遅れる、遅い、ぎこちない、力み過ぎる、できないなどの問題が見られます。
姿勢と運動の仕組み
動きの巧みさは、上記のような運動と姿勢の組み合わせによって作られています。
脳の中では、目的の動作を計画すると、姿勢が先に作られ、その後運動がおこります。実際に体の筋肉の働きも、姿勢を安定させる筋肉が100ミリ秒(0.1秒)程度運動に先行して起こります。
脳梗塞、脳出血など中枢神経の障害がおこると、姿勢と運動の組み合わせが乱れるようです。
上の例のようにエレベーターのボタンを押そうとすると、肩が上に上がり肘が曲がるなど姿勢の準備がうまくいかないことがしばしばみられます。
動きを巧みにするリハビリ
先述の通り姿勢と運動の組み合わせが重要です。
運動(動き)のみに注目したリハビリではなく、運動を行う前の姿勢にも注意しておくことが重要です。指先を動かす練習をしたいのであれば、指が動くのにふさわしい姿勢で行うことを強くお勧めします。
また、課題によって姿勢は変わります。
エレベーターのボタンを押すのであれば、立っているもしくは車いすに座って体が起きていなければなりません。
ただ、姿勢は通常無意識に作り出されています。
仮に意識的に背筋を伸ばしても次に指を延ばそうとすると意識が指先に移り背筋が緩むわけです。
目的(課題)に合わせて姿勢は異なります。
床に落ちているコインを拾おうと指を伸ばすときは、体は前屈していなければならず先程のエレベーターの例とは異なります。
このような姿勢の違いは健常なときは意識したこともない人がほとんどだと思います。
課題にあわっせて最適な姿勢を脳内で探し出しているのだと思われます。
Rehabilitation Plusのリハビリはこの姿勢・運動・脳そして感覚に注目して行っています。
まとめ
運動の巧みさなどは、姿勢と運動の組み合わせによって作り出されています。
また、運動は意識していても姿勢は無意識に作られるのが通常です。
姿勢は課題に合わせて作られるので、課題、動作、姿勢の組み合わせを意図したほうがより全体のパフォーマンスが上がると考えられます。