非麻痺側手・足の使い方にも注目を
脳卒中後片麻痺患者の非麻痺側の使い方が気になるセラピストはとても多いかと思います。
片麻痺患者の非麻痺側の使い方にはどのような問題があるのでしょうか?
先日このようなことがありました。右片麻痺の方です。
立ち上がりる際に、非麻痺側の下肢で伸びあがるように立ち上がり麻痺側下肢が浮いてしまう患者さんとの間で以下のようなやり取りがありました。
私:左足で「グイッ!」と伸びあがるのをやめてください。
患者さん:わかりました。
・・・ 翌日 ・・・
患者さん:右足が浮かないように練習したけど浮いちゃうよ。
私:???
このやり取りはとても衝撃的でした。
お判りでしょうか?私は左足で伸びあがるのをやめてほしいとお願いしたのですが、患者さんは右側が浮かないように注意しています。
ということは患者さんは右足が浮かないように左脳を動かしています。
私は左下肢で伸びあがらないように右脳の使い方を調整することを要求しています。
一つのことを一緒に見ていても全く別のことが脳内で再現されていたと想像されます。
麻痺側が強い痙縮に支配されているこの症例の場合、大脳半球の損傷側と非損傷側の間にどのような関連があるのか気になりました。
非麻痺側で頑張りすぎると、麻痺側に連合反応と呼ばれるような緊張が起こります。
随意運動の発揮しやすい非損傷側の脳を使って動作することは、半球間抑制により麻痺側のさらなる運動能力の発揮を妨げる可能性が示唆されています。
一側肢から情報が皮質に伝わると、その情報は脳梁を介し反対側の体性感覚野にある5層錐体細胞の樹状突起の活動を抑制し、のちに反対下肢から入ってくる情報を十分に受け取れなくなる。
この症例に置き換えると、左手足に頼り立ち上がるということを常に行っていると右下肢からの情報は十分に左脳の体性感覚野に到達できないことが考えられる。
また、TMSを用いた実験で麻痺側肢の回復に必要なのは非損傷側に抑制性の刺激を与えた場合であることが指摘されている。
以上のことからこの症例において重要なことは次のことと考察する。
非麻痺側から非損傷側に入力される情報に過度に依存した姿勢・運動の構成を行っていることは、麻痺側の使用や回復の妨げになっていた可能性がある。
非麻痺側の使い方にはご注意を。
参考文献 : 左右の脳が抑制し合う神経回路メカニズムを解明
-最新の研究手法で半世紀の謎がついに明らかに-
2012年2月24日 独立行政法人 理化学研究所