痙縮・痙性の原因と責任病巣とリハビリについてのまとめ

痙縮は上位運動ニューロン症候群の一側面として表れます。上位運動ニューロン障害の本質の理解を深めたい方は下の記事もご覧ください。

臨床上痙縮は動作を妨げ、時に痛みや二次的に筋の短縮や拘縮を引き起こす、”やっかいもの”として見られています。

痙縮はどこの障害で起こるのでしょうか?

2010年頃、神経症候学の著者である平山恵造先生とお話した際、「現状、わからない。」という答えでした。

痙性をもたらす原因

田中勵作先生は↑のように痙縮をもたらす原因を報告しています。

その後、長岡正範先生が運動野(4野)の障害だけでは起こらないことを発表しています。

痙縮はどこから?

また、臨床的にも運動野に起こる小梗塞は末梢神経障害と見間違うほど低緊張の運動麻痺を呈することがしられ、Astrocytoma(星細胞腫)など脳腫瘍で運動野の切除術を行われた患者の運動障害も同様であることを経験します。

痙縮は障害部位によって様相が異なる!

以前、Gliobrastoma(膠芽腫)の方のtonusについて職場内で討論していた際に、Spasticityでも双方向に抵抗を示すタイプのトーヌスだということで、Rigo-Spasticityなのか?ということを話したことがありました。

頭蓋内の障害による上位運動ニューロン障害でもSpasticityの様相は異なる感じています。

脊髄障害の方はどうかというと、Multiple Sclerosis(多発性硬化症)や、純粋な脊髄損傷(比較的単髄節ないし小髄節の障害)の方は、とても強い筋収縮を伴うSpasticityを示すように思います。

つまり、上位運動ニューロンの障害でも障害部位によって様相の異なるSpasticityを作り出すと思われます。

皮質脊髄路の障害がSpasticityを作り出しているわけではないというのは先ほど説明しましたが、”バランスの崩れがこのtonusの変化を作り出すのではないか”という仮説があります。

脳卒中後片麻痺の方は、Wernicke-Mann Postureを示すことがありますが、脳卒中で損傷されることが少ない前庭脊髄路からの下行性シグナルによって上肢屈曲・下肢伸展のトーヌスが高まるというものです。

脊髄損傷の症例ではどうでしょうか? 印象としては筋の伸張がトリガーになって非常に素早く強い収縮のトーヌスの変化が起こるように思います。この場合のトリガーになるのはバランスや筋の伸張反射を考えることが多いです。

リハビリではどうする?

脊髄損傷の方をイメージしたFlexor Spasticityへ対応するリハビリアイデアを3つ挙げましたので参考にして下さい。

脊髄損傷の方のリハビリのアイデア

脳卒中片麻痺のSpasticity についてはまたの機会にご紹介いたします。

痙縮の定義

最後になりますが、痙縮の定義を記しておきます。

Disordered sensory-motor control resulting from an upper motor neuron lesion presenting as intermittent or sustained involuntary activation of muscles.

Pandyan AD, Gregoric M et al 2005, Burridge JH, Wood DE, Pandyan AD, et al.  2005

(訳)上位運動神経損傷によって、筋の間歇的あるいは持続的な非随意的活動による感覚運動コントロールの障害である。

ポイントは痙縮は結果であって、原因はコントロールの障害ということです。
このことはリハビリを行う上で非常に重要な手がかりといえます。