ジスキネジーの種類と定義・リハビリについてのまとめ

ジスキネジー(dyskinesis dyskinesia ジスキネジア)は、古くからの概念であって具体的症候名ではありません。

19世紀半ばまで不随意運動は当初未整理であったが、20世紀になると運動現象により分類されていました(古典的ジスキネジー)。運動現象による分類のなかで、チック(1894年)、片側場リズム(1923年)などが分離されていきました。

このように漫然と不随意運動を意味していたジスキネジーは徐々に整理が進み今日では病態機序によって分類されるに至っています。

パーキンソン病のリハビリについては下の記事にまとめています。

病態機序による新規概念とは

20世紀になり薬物の使用による異常運動が注目されるようになり、抗パーキンソン病薬の使用でも発現することが注目されてきました。これはまだ比較的新しいことで今から50年ほど前1970年代のことです。

古いジスキネジーが運動形式の現象をもって分類されていたのに対し、薬物によるという概念で括られる異常運動と規定したものでした。薬物性ジスキネジーが注目されると、老年者のジスキネジーにも注目がなされ薬物性ジスキネジーと鑑別上の問題として挙がるようになりました。

定義

ジスキネジーは概念であって具体的な内容を含んでいないことが他の不随意運動と異なっています。そのため、近年(1970年代以降)の論文を見ても症候学的な定義や内容についての記載がほとんどないというのが現状です。

とはいえ不随意運動の内容を具体的に示そうとしている論文をみると、以下の様な点が挙げられます。(顔面領域のみ)

  • 口をもぐもぐする
  • 口をとがらせる
  • 舌を突き出す
  • 舌をねじる
  • 口唇をなめる
  • 咀嚼する
  • 顔をしかめる
  • (口を閉じたまま)顎を開閉する

頭頚部だけでなく全身を観察すると、全身性であることもあるが局所的なこともあり、不規則な捻転を伴った動きが多いように思います。

病態

薬物性ジスキネジー

神経弛緩薬、抗パーキンソン病薬の副作用によるものとして以下のものがあります。

神経弛緩薬によるジスキネジー

ジスキネジーが顔面に限局することが少なく、全身にみられます。臨床的に振戦型、早発性、遅発性ジスキネジーなどに分類されることが多く、それぞれ分類により病態の機序が異なっています。早発性ジスキネジーではドパミン作動性受容体の化学的欠乏による受容体の過興奮、遅発性ジスキネジーではグルタミン酸脱炭酸酵素が黒質、淡蒼球内節、視床下核で減少することにより起こるとされています。

抗Parkinson病薬によるジスキネジー

1970年代より抗パ剤の長期投与でジスキネジーが生ずることが注目され、顔面、体幹、四肢と全身に生じることが報告されています。

またいわゆる若年性Parkinsonismの方がジスキネジーを生じ易く顕著に見られています。

服薬期間が長いほどジスキネジーが発現しやすくなるといわれ、可能な限り控えめの量を用いるように変遷してきています。

顔面のジスキネジーは神経弛緩薬や老人性のものと顕著な違いはなく、体幹部では頸の前後屈、傾き、捻じれなどの唐突な動きを繰り返します。

一般的にParkinson症状が先に出現した側にジスキネジーが強く現れます。  

ドパミン作動性受容体の変調が病態の機序とされています。

他の薬物によるジスキネジー

抗てんかん薬、抗ヒスタミン薬、消化器用薬、降圧剤などによってもジスキネジーの報告はなされています。

口ジスキネジー

老年性ジスキネジー

口唇、舌、下顎の不規則な不随意運動で静止時に自発的に生じ、口唇をとがらせる、口の中で舌がくねくねと捻転して動くなどが見られます。顔面の下半分に限局していることも特徴です。

近年では老年性というだけでなく、線条体を中心とする病変が背景にあると指摘されています(秋口, 1981 Altrocci・Forno, 1983など)。

ジスキネジーと(の)リハビリ

静止中突発的に動き出すジスキネジーは臨床的に本人は苦痛を伴わないことが多いと経験しています。しかし、静止を求められる食事中や公共の場においてじっとしていられないことは社会的苦痛を体験していると考えます。
ジスキネジーの背景にある基底核の機能障害は姿勢異常や不随意的な動きを作り出しています。随意運動の最中ジスキネジーは消失あるいは減少することが多いように思います。また、夜間睡眠中も消失していることが多いです。

このことから随意運動とその背後にある姿勢制御とを関係を考えたリハビリを行うこと必要であると考えます。

手掛かりとしては注視活動の様に四肢の動きを伴わない活動においても頸部筋群は姿勢の安定のため活動が変化します。つまり意図的活動と姿勢の協調関係を注意深く観察していくことが重要と考えています。