パーキンソン症候群で歩けなくなった方の挑戦・リハビリについて
東京では緊急事態宣言が解除されようという、5月下旬のある日電話が鳴りました。
その電話は1年前リハビリを利用いただいたパーキンソン症候群の方S様の奥様からでした。
「いろいろあって、主人を老人ホームにお願いしたら、コロナで出られない1か月で歩けなくなってしまいました。どうか助けてもらえませんか?」というものでした。
奥様の献身的な介護や老人ホームの方のご協力によりSさんとの面談を予定することができました。もちろん、コロナウィルス感染症の影響があるため、私がホームに出向き一度状況を見せていただくことになりました。
1年ぶりの再会
2020年5月末のある日、老人ホームに出向いた私は、車いすに乗ったSさんと奥様に再開した。実に1年ぶりの再会がこんな状況になろうとは何とも皮肉なもので、コロナウィルス感染症の影響がこういったところにも出てきたかと、考えさせられました。
Sさんは、長時間車いすに乗っているようで足がむくみ、背中も丸くなっていました。
開口一番「情けない。何とかお願いします・・・。」と小声のSさん。
介助で立ってみるものの、腰が引けて立っていることもままならず、「座らせてください、疲れました。」と。随分体力も落ちている様子でした。観察してみると足はむくみのため靴下の跡がくっきり。トイレに行くのが大変なため、水やお茶も控えたため尿路感染症も併発したとのことでした。排尿が困難になり導尿用のカテーテルが必要な状況です。股関節や膝の関節も筋力が弱いだけでなく、関節が伸びないほど硬くなっていました。
リハビリの計画
このような長期間の臥床や不動・不使用による身体機能の低下を廃用症候群といいます。一般に落ちた体力はそれまでの期間の数倍かかるといわれています。しかし、この状態であと数か月動けない状態が続くと歩くどころか床ずれ(褥瘡)や転倒などほかの問題も起こる可能性が高いです。
早急に機能回復を図る必要があります。スケジュールを確認し2週間で5回のリハビリを計画しました。と同時に、できるだけホームから外出許可をもらい自宅でリハビリをできるように奥様にお願いをしました。
リハビリは運動能力の改善を図るために行いますが、リハビリの時間だけ頑張ってもその他の時間を考えて計画を立てないとうまくいかないことが多いのです。ホームでは個室で話し相手もいなくて声が小さくなったと言ってたため、話すこと、出かけること、動くこといろいろなことが回復のために必要です。
再び歩けるように
ご本人の努力、奥様、入所していた老人ホームなどの協力もあり、リハビリ開始から3日後には杖で歩けるようになりました。
自宅で歩けるようになり、曲がっていた足腰も随分伸びてきました。
私のかかわりはもう少しです。もともと通っていたデイサービスのリハビリに通えるようになるところまで、週1回程度経過を見て終了となる予定です。
パーキンソン病やパーキンソン症候群は一般的に緩徐進行性(ゆっくりと症状が進行する)と言われています。一時的な機能低下が定着してしまうことも少なくありません。
後日奥様から、「あのまま、車いすになっちゃうと思ったんですよ。こんな時(コロナウィルス感染症の流行)ですけど思い切って電話して本当に良かったです。」と。うれしい言葉でした。