視床痛の原因とリハビリ
視床痛について悩まれている方が多くいらっしゃいます。
この記事では視床痛の痛みの原因とリハビリについて解説していますので、リハビリの手掛かりを得ることができると思います。
なお、この記事はセラピスト向けに書いておりますので、専門用語などわからないことがありましたら、お尋ねください。
また、脳卒中のリハビリ全般については以下の記事にまとまっていますのでこちらもお読み下さい。
視床痛とは
視床出血(梗塞)後に生じる視床痛は昼夜を問わず痛みを生じさせ、日常生活の機能的な側面のみならず生活リズムや心理面にも大きな問題をもたらす。
視床痛は以下の3要素を特徴とする、中枢性疼痛(Central Pain)と定義されている。
- アロデニア : 微小刺激が、すべて疼痛としてとても痛く認識される感覚異常のこと
- 有痛部の皮膚温低下
- モルフィン抵抗性 : オピオイド鎮痛薬が利かない
症例報告
1891 Edinger, 1906 Dejerineらが報告した症例が視床痛の第一例とされている。
「視床後外側部の梗塞、出血後一定期間を経て知覚障害を伴う激しい自発痛が生じるものを視床痛と呼んだ」。
視床痛を発生する障害部位
視床痛を含む脳卒中後の疼痛はCentral Post Stroke Painといい、15,000例に1例の頻度で生じる。
視床外側部(体知覚中継核)以外では視床痛は見られない。
脊髄視床路と内側毛帯の混在する脊髄視床路が責任病巣とされている。
視床痛の発生機序
新脊髄視床路の遮断によるdeafferentation painであるが、視床中継核で障害を受けた全例に発生はしないとされ、発症機序には以下のような仮説がある。
- 知覚路の神経細胞や繊維の障害により感覚求心系の被刺激性が亢進し閾値以下の刺激で反応するようになった(Dejerineら)
- 脊髄視床路の障害により視床への入力がなくなるため、中脳ー視床下部系が興奮する(Spiegel)
- 有害刺激反応性ニューロンが、蝕刺激(内側毛帯系)で抑制を受ける。内側毛帯系が有害刺激受容系に対して抑制的に作用しており、この抑制が外れることにより視床痛を起こす。(Mountcastle)
- 旧脊髄視床路などが有害刺激に反応して活動し、視床痛が発生する。また、旧脊髄視床路との興奮差が痛みを発生させるとも考えられる。(Drake)
- 末梢神経(三叉神経後線維)の切断後に、その繊維が終始する脊髄・延髄内のシナプスの存在する部位でburst firingがみられ、痛みの原因と考えられる
少なくとも、脊髄視床の異常興奮と旧脊髄視床路などの補足的痛覚求心系を介しての入力増加によって発生するものと考えられている。
リハビリの手掛かり
上記の発症機序による視床でのBurn firingを抑制できる、皮質運動領野の刺激は同時に視床痛を抑制できる(Thalamic Pain : Pain Including Mechanisms, Takashi Tsubokawa, 1992)。
視床痛は、このBurn firingを発生させる過程にその発生機序を解くカギがあるのではないかと言われている。
運動野からの下降性シグナルが視床痛に寄与する可能性を含むと考えられる。
もちろん、随意運動の出力だけでなく、皮質脊髄路の重要な役割である感覚入力の遠心性コントロールにも注目した運動療法を提供することが望ましいと考えられる。
まとめ
視床痛の原因とリハビリについてまとめました。視床単独の機能として痛みを生じているというより神経システム全体の不和として生じていると考えた方がよさそうです。
ニューロリハビリのまとめが下の記事にありますので合わせてご確認ください。