姿勢制御と運動制御(1)歴史的背景から

今日の脳神経学の進歩により多くの学者が姿勢制御と運動制御について研究を進めています。

リハビリ職として患者さんに関わるうえで、ヒトの動きの仕組みを理解することはとても重要なこととなります。

もちろんその理論に合わせてどのようにリハビリのプランをつくり実践するかという”技術(スキル)”も重要です。

ベルンシュタインの研究・功績

さて、ヒトの動きを研究している人というのは昔から多くあり、私が興味を持って調べた中では、旧ソビエトのベルンシュタインが有名です。

ベルンシュタインは米ソ冷戦真っただ中で合った1940年代に「ヒトの動き」を研究していた一人です。

当然、そのころのソビエトのこの情報は国家機密となり長い間図書館の倉庫に格納されていたと聞きました。

1990年台になり英訳本「Dexterity」、その後日本語訳「デクステリティ 巧みさとその発達」という本が出版されました。

デクステリティの本
デクステリティ 巧みさとその発達

この本の中でベルンシュタインは「馬に乗った騎士が敵を見つけるや否や、ひらりと飛び降り転げるさなか銃を構えて敵を撃つ。

この美しい一連の流れはどのようにしてできるのだろうか?」ということを言っています。

今日の科学で説明しようとしても、この一連の動作の説明は容易ではありません。

バランス、柔軟性、視力、器用さ、意欲・・・様々な側面からの説明が必要になります。

ベルンシュタインの解釈は、今日では古いものとなり誤解を招くのでここでは紹介しませんが、脳はブラックボックスといわれていた時代からこのようなことを研究していたことに驚くばかりです。

Posural Control System 姿勢制御システム

現在の解釈では1994年にJean MassionがCurrent Biologyのなかで紹介している「Postural Contoro System」が合理的だといえます。

以下Jean MassionのPostural Control Systemの原文(英語)のリンクです。

一つの行為をしようとしたとき、感覚情報を取り込みその情報をもとに姿勢制御と運動制御が決まります。そして身体各部の筋へ命令が下るわけです。

姿勢制御については身体の内部表象を提供する姿勢の身体の図式、垂直に関して支持条件、および身体のオリエンテーションを含む身体の力学について説明がされています。

1994, Jeam Massion et al, Postural Control Systemより引用

その姿勢制御の過程では”Orientation”と”Stability]”がどのような状態であるかも取り込まれます。そしてその情報は現在の身体の状況を反映する脳内の身体図式(Body Schema)となるので、今これからどのように動くことが効率よいのか判断できるものと思います。

続きは、姿勢制御と運動制御(2)をご覧ください。