更新日:2022.04.07

姿勢制御と運動制御(2)神経学的の視点から

以前2019年11月22日にも同じテーマで記事を書いていますが違った視点からまとめてみました。前回の記事、姿勢制御と運動制御(1)もどうぞ。

Youtubeに動画をまとめましたのでご覧ください。

簡単にまとめると下の様になります。

随意運動と姿勢制御のための下行性信号は違う経路を通っている!

筋活動を起こすための下行性シグナルはすべて運動野(area4)から皮質脊髄路を通ると思っていませんか?

皮質脊髄路、特に外側皮質脊髄路は運動野から放線冠を下降、延髄の錐体交叉で反対側に軸索を伸ばし脊髄を下降し脊髄前角のα運動ニューロンに終始する下行性伝導路です。この系は随意運動に大きく関与しており、一側の運動野に対して対側の手・足など末梢の随意運動に関与しています。これは以かつて錐体路と言われていました。

姿勢と随意運動の概念図

一方姿勢制御に関与する系統は経路が複雑かつ単一でないためかつては錐体外路と呼ばれていました。こんにちではこの中に網様体脊髄路、赤核脊髄路、前庭脊髄路、視蓋脊髄路など〇〇脊髄路と呼ばれる神経回路が明らかになっています。

つまり、姿勢制御をする下行路と随意運動を伝える下降路は異なる神経回路ということです。

役割分担をしている

では、それぞれの運動指令は別々に生成されているのでしょうか?

前頭前野で運動の計画をたてると運動前野でどのような運動パターンが適切かということを大脳基底核へ情報を送り決定します。皮質ー基底核ループといいます。

随意運動を実行するにあたり適切な姿勢を作るためのシグナルは脳幹に投射され、前述の網様体脊髄路などを下行し姿勢制御に必要な筋活動を作り出しています。

基底核から運動前野に戻った運動パターンの情報は運動野に伝えられ外側皮質脊髄路などを下行し随意運動として出力されます。

タイミングは事前に調整されている

姿勢制御は随意運動に先行すること100~300ミリ秒で筋活動として出力されています。

ですので、”目の前のリンゴに手を伸ばしたら、重心が前に移動してつんのめる”なんてことは中枢神経が正常に働いていればないことになります。

姿勢制御に必要な感覚入力

姿勢制御と運動制御は事前に外部・内部環境を認識するところから始まります。

それは、目の前にあるコップは手を伸ばせば届くのか、一歩ステップしなければ届かないのかを視覚によって認識しないと行動できないためです。

姿勢制御に必要な感覚入力は下の記事にまとめてありますので、そちらも合わせてご覧ください。

まとめ

姿勢と運動は巧みに計算され出力された中枢神経系からの下行性シグナルにより作り出されています。

この記事を書いた人

塚田 直樹
Rehabilitation Plus 代表 理学療法士として20年以上の経験 専門理学療法士・認定理学療法士・ボバースインストラクターとして年間50以上の研修会に登壇している