随意運動の回復とPlacing Response
Placingは随意運動の回復に必須
Placingという言葉は時々耳にするかと思います。
Placingがどのようなことかを生理学的にあるいは臨床的に説明するのは難しく明快に説明できる方は少ないと思います。
今回は、PlacingResponse(プレーシング反応=滞空)について、リハビリに有益な解釈を加えてまとめてみました。
Placing Responseとは
ロズウェルは著書中で、プレーシング反応(Pracing Response)について以下のように述べています。
A series of reactions (the placing, magnet and supportive reactions) are available to bring a non weight-bearing limb onto a stable surface and help it support the weight of the animal. Thus, if a cat is held with all four limbs off the ground and then brought towards the edge of a table, the slightest touch of the table against any aspect of one of the feet will cause an immediate placing of the foot squarely down on the table.
Control of Human Voluntary Movement / rothwell, john 2012 / Chapter 8.4 Postural Reflex described in animals
This is an example of a placing reaction: correct orientation of the limbs ready to take the weight of the animal.
猫が四肢を浮かされテーブルに向かって運ばれると、四肢のいずれかのテーブルへのわずかな接触により、足がまっすぐになります。
プレーシングは、姿勢に対する自律的な一連の反応としてみられており、Magnetic(磁石のように付いていく)でありSupportive(支える)ことを含むということになります。
宙に浮かされた(持ち上げられた)ネコは、四肢がテーブルの縁に触れるとテーブル上にすぐに足をつきます(踏み直り反応)。
四肢のオリエンテーションは体重を支えるための準備として、プレーシングが支えるという機能に結びつけることを一例として示しています。
Placing の臨床的意義
セラピストの視点から臨床的にみるとどのようなことになるでしょうか?
正常な人の四肢を他動的に動かそうとするとその肢がついてくる(ロズウェルの表現ではMagnetic)という現象があります。
実技練習などで感じたことがあるでしょうか?経験のない方は同僚やご家族に協力してもらい試してみましょう。
Placing Responseは、姿勢応答の一部ということを理解すると難しいことではありません。
何らかの変化に対する応答ですので、セラピストが接触するという感覚情報や四肢にかかる重力などがもたらす感覚情報に応答していると思われます。
ということは、触り方によって応答が異なります。
つまり、対象者が応答したくなる触り方を考えて触らないとならず、触れ方、持ち方などを検討する必要があります。
例えば腕を下から支えたり、脚を抱えるように持ったら対象者は身をゆだねてしまいますので、(Placing)反応は起こりません。
感覚情報の変化で注意すべきところはOrientation(オリエンテーション)によってこの反応が起こることです。指先など感覚受容器が多い場所はこのオリエンテーションを体性感覚情報から伝えるのにとても有用な場所となります。
Holding
四肢が空間に保たれることを意味しています。MMTで3あるか否かということの議論ではありません。
Holdingできる背景には、空間でどの位置にその肢があるのかを認識できる、あるいはどの方向に動かして保持するかという感覚の入力を伴っているからです。
Placing応答がありOrientationがなされた身体は、その状態を保持するために感覚入力を受け続け、その姿勢を保つための筋活動を作り出しているのです。
Fractunation
分画という意味を持つこの言葉は、四肢が分離して動く(動かされる)ことを意味します。
例えば、座位で前方に腕がHoldingされていた(肩屈曲、肘、手、指がまっすぐに伸びていた)とします。ここから、手を顔の方に持ってくるとすると、肩、手、指はそのalignment(配列、位置)のまま肘関節が屈曲することになります。
この時の筋活動は肘を曲げるために上腕三頭筋が遠心性収縮となり、上腕二頭筋が求心性収縮となります。この両筋はニ関節筋ですので、肩関節の運動にかかわる近位部はそのままの位置を保つ必要が出てくるので、筋活動の組み合わせがとても複雑になってきます。
Voluntary Movement
機能的な随意運動には以下の要素が含まれています。
- 姿勢制御を背景に持ち、目的動作達成のために協調して働く
- 主動作筋と拮抗筋が強調し、効率的な筋活動に基づいている
- 感覚入力による調整を受けている
随意運動は姿勢制御を背景に持ち、目的となる随意運動を効率よく達成するために姿勢の制御をしています。そのため、随意運動とともに姿勢制御が十分に行われている必要があります。
随意運動の実行中フィードバックされてくる感覚入力によって運動の調整を行える必要があり、運動中であっても常に感覚器からのフィードバック情報を取り込める必要があります。
まとめ(随意運動の回復に向けて)
以上のプロセスを考えると、随意運動の回復には運動の組み合わせや速度、強度という出力の問題だけでなく、姿勢制御や感覚入力といった他の姿勢・運動に関与する要素との関連性も十分に考えながらリハビリを進めていく必要があるといえます。
姿勢制御と運動制御の関連については以下のきじがさんこうになるとおもいますので 併せてお読みください。