脳梗塞・脳出血発病から社会復帰までの流れを解説

脳卒中を発症したら読んでほしい記事

この記事は、脳梗塞・脳出血などの脳卒中で突然入院を余儀なくされた方とそのご家族向けに書いています。

以下のようなお悩み、不安があるかと思います。

  • 体は戻るのか?
  • 今後の生活はどうなる?
  • 仕事は続けられるか?
  • 車いすの生活になるのか?
  • リフォームしなきゃならないの?

今後の流れを知ることで少し安心できるかと思います。典型的な脳卒中を想定して発病から仕事などの社会復帰までの流れを書いています。

ここでいう典型的な脳卒中というのは、半身まひの後遺症を示すような状況を指します。本来脳卒中の症状はこれだけでなく、めまいや意識障害、物の見え方や記憶、言語障害など多岐にわたり、脳の同じ場所に障害を受けても全く同じ症状の人はいないというくらい個人差があります。

私は、20年以上にわたり大学病院で理学療法士として勤務し救急治療の場面から在宅療養中の方まで幅広くみてきました。理学療法士の視点から発病から社会生活に戻るまでの流れをまとめてみました。

脳卒中のリハビリについては下の記事にまとめています。併せてこちらもご覧ください。

発病:病院へ

この記事を読まれている方はこの時期を経験された方、ご家族だと思います。発病から1か月程度を急性期もしくは早期といいます。早期の救急医療によって、その後の体の動きや生活など(予後(よご)といいます)は変わってきます。

脳卒中は時間との戦いです。特に脳梗塞は早く救急医療を受けると病状によってはほとんど後遺症がなく回復します。

しかし、かなり多くの方が麻痺のような運動障害やしびれなどの感覚障害、記憶や空間の認識、バランスの障害など様々な問題を残すのも事実です。

脳卒中:急いで病院へ

以下のような障害が代表的な後遺症です。

  • 運動障害: 麻痺、失調(ふらつき)
  • 感覚障害: しびれ、鈍麻(どんま:鈍さのこと)
  • 高次脳機能障害: 記憶、空間の認識、行為の手順の喪失など

この時期は、血圧が安定しなかったり、意識が定まらずぼんやりしたりしている方も多くいらっしゃいます。

多くの方は1か月程度で血圧などが安定してくるようになり、本格的にリハビリに取り組むため、リハビリの病院(回復期リハビリテーション病棟を持つ病院)への転院を検討することになります。後遺症が少ない方は自宅に帰られる方もいらっしゃいます。重症な方でリハビリによる回復が困難な方も老人ホームや老人保健施設などへの退院となることがあります。

入院中に退院後の生活を見据えて介護保険の申請を行うこともあります。その際は、役所の担当職員がご本人の病状について見にきます。その後、介護保険が適応とみなされると介護保険の被保険者となり、要介護度が定められます。介護度の重い方から要介護5~1、要支援2、1となります。

リハビリ病院での集中リハビリは半年まで

リハビリの病院を探すことになると、ソーシャルワーカー(社会福祉士)の方がご本人、ご家族の希望(場所・経済面など)を伺い病院を選定していくことになります。

おそらく、お住まいの地域周辺で条件にあったリハビリ病院を探すことになるかと思います。東京ではおおむね1つの区に少なくとも2,3の病院が該当すると思いますが、地域によっては選択肢の少ないかもしれません。

病状が安定してくると医学的な処置が少なくなります。その後はリハビリが必要な方は専門の病院へ転院することになります。不要な場合は自宅へ退院することになります。

リハビリ病院へ転院

リハビリ病院での入院期間は150日(高次脳機能障害などを併せもつなど重症な方は180日)を上限と定められています。

入院するとご家族や本人の状況を見たり聞いたりした医療スタッフでの打ち合わせ会議が開かれます。この会議で目標を定めリハビリの計画を立てていきます。

退院までは病院内でのリハビリに加え、必要な方はバスの乗り降りや施設・病状によっては車の運転練習など実用的な機能の獲得に向けたリハビリが行われます。

病院は日常生活を点数化した評価を行っています。改善率が国によって求められていますので、生活の中でできることを増やすためのリハビリが続くと思います。

動けても安静のために車いすが必要なこともある

一般に発病から半年たつと症状の改善があまり見られなくなるといわれ、障害(症状)の固定とみなされます。そのためリハビリ病院での入院も半年ということのようです。その後も続く症状は後遺症とみなされ障害認定されます。

個人的には半年という時期は一つの目安であり、回復の平坦化はリハビリの取り組みで変わるものと思っています。詳しく知りたい方は下の「 長期経過した方のリハビリ効果 」をお読みください。

また、2020年の東京都内のリハビリ病院の入院実績は150日に足らず概ね3か月程度で退院となることが多いようです。

Rehabilitation Plusに来られた方もリハビリ病院を90日程度で退院される方が多いです。退院時の状況は万全に回復したわけではありません。車いすで退院される方も当然ですがいらっしゃいます。

障碍者手帳の申請も多くの方が入院中に行われます。障害の等級は肢体不自由では重度な方から1~7級まであります。

手すりなど必要な介護用品を考える

退院が近づくと、病院スタッフによる自宅の評価(家屋評価)が行われ、必要な手すりや介護について検討がなされます。
また、担当のケアマネージャーが決まり自宅退院後に介護保険で受けるサービスも同時期に計画されます。

例えば、車いすのレンタル、入浴サービス、デイサービスへの通所などです。ケアマネージャーは介護保険受給者のサービスについて計画を立てることを職務としていますので、退院後のサービス内容はケアマネージャーと相談して決めていきます。

退院

自宅へ退院した際の生活状況により大きく異なりますので一概には言えませんが、片麻痺が後遺症として残存した方の場合介護保険によるサービスを受けることが一般的です。

もちろん年齢や程度により復職する方や、自宅で介護を必要とせず生活できる方もいらっしゃいます。

その後のリハビリは介護保険による訪問リハビリ、通所リハビリ(デイサービスなど)となります。医療保険適応の病院ではリハビリは受けられません。

介護保険で受けられるリハビリについては、マンパワーの問題などから個別対応してもらえないなど質・量ともに十分でないとの指摘が多くありましたがこの2、3年で療法士の数も増え徐々に解消されてきている印象です。介護保険でのリハビリサービスはリハビリ特化型デイサービスなどでは比較的高頻度のリハビリを受けられるようです。

片麻痺者の屋外杖歩行

2015年頃よりスポーツジムなどでも理学療法士らが従事しリハビリを行っている施設が増えてきています。これらのサービスは保険の適応のものと自費のものがありますので確認が必要になります。

その他、当施設の様に保険診療とは切り分けた自費リハビリ施設も増えてきています。2020年現在都内では数十の施設が設立されています。

当施設の例では、社会復帰に向けリハビリに取り組む方が多く来られます。介護保険の対象年齢は65歳(障碍者手帳を取得していると40歳から) からとなっており、 復職を考える方はデイサービスなどに加えて、自費リハビリ・スポーツジムなどを選ぶ方も多いようです。

まとめ

発病からの期間に応じて様々な治療やリハビリが提供されるように医療保険・介護保険などの制度があります。
しかし制度上最大限入院した場合であっても急性期病院60日、リハビリテーション病院180日合わせて240日約8か月が入院の上限となります。

そののちに自宅へ退院となりますので、その日に向けて様々な準備が必要になります。

その間あるいはその後も続けてリハビリを行うことが必要です。