脳梗塞・脳出血後片麻痺の手の回復に必要な要素
脳卒中後に”手”の機能回復が思うように進まない方がいます。
この記事では手の機能回復に必要な要素について説明しています。リハビリの参考になれば幸いです。
手の回復を考えるなら以下の3つが需要と考えています。
手の役割は主に3つ。
- 物を操作する
- 支える
- 感じとる
一つずつ解説していきます。
操作のための手
多くの方が、物の操作にばかり目を向けています。ひょっとすると理学療法士・作業療法士の先生方もそうかもしれません。
操作するとは言うまでもなく、手で物を操ることです。箸をもつ、字を書く、着替えるシャツを掴むなどです。
この動きを獲得するためにはとても複雑な筋肉や感覚の働きが必要になります。
一例を示すと紙に字を書くとき、手首で腕の重さを少しだけ支えつつ指先はペンの筆圧を調整しながら紙の上をスムースに動きます。指先の力加減、握っているペンの感覚、腕の重さを調整する筋力など様々な要因がかかわってきます。
もし手で何かをもって空間で保ったり操作することができたなら素晴らしい回復だと思います。より細かな指先の動きを手に入れるためには腕を空間に保持する能力が不可欠だからです。
支える手
体を支えることは手の大事な役割です。
手で支えるためには、手だけでなく、胴体(体幹)と腕(肩・上腕・前腕)の支える力がしっかりとしている必要があります。
生後半年くらいの乳児はうつ伏せで、両手をつっぱり支えています。その後、這ったり、物に手を伸ばしたりが活発になります。
手で支えられるということは、肩から手までが支えるための筋力が必要になります。つまり手先をコントロールするために必要な腕の力の練習にもなります。
転ぶ瞬間、健常人の手は最大限伸びて開きます。この伸びる・開くという組み合わせは転倒した時の衝撃を最大限緩和するのに役立ちます。開かない手では麻痺側の信用がおけず、十分に体重を預けることができません。そのため手の問題だけでなくバランスの悪さにもつながるのです。
感じとる手
ポケットの中からコインを取り出したり、背中でシャツをズボンに入れたりするためには手で触れたものの感触を感じ取らなければできません。
また、手の感覚を感じ取るためには手の平だけでなく、指を動かしている筋肉が柔らかくしなやかでないとものの硬さはわからないのです。
眼を閉じて手の平にペン(鉛筆)を1本をのせても、握らないとペンが丸いのか六角形なのかわかりません。これは手の筋肉を動かすことによって物の形を認識しているからです。手がカチコチに硬くては物の形は認識できないのです。
上の写真は左片麻痺の方(右利き)です。左手で紙を抑えて右手で引き千切っています。左手が適度に紙を抑えていなければ紙はちぎれません。強く握れば紙がくしゃくしゃに、弱ければ右手に引っ張られて抜けてしまいます。紙が引っ張られる感覚をうまく力加減に反映する必要があります。
リハビリの進め方
上の3つですがこの順番に練習しましょうという手順は定められていません。
体の使い方や手の使い方の発達過程を考えると、支え、感覚、操作の順でリハビリを進めるのが妥当と考えています。
とはいえ、「手の感覚が戻るまで箸を持たせない」などということではなく3つの要素を考えながら進めていくということです。
どれかの要素が欠けていたり、3つの練習に偏りがある場合は一度リハビリの構成(プラン・プログラム)を見直してみると良いかもしれません。
脳卒中全般の情報は以下の記事にまとめてあります。他の情報は下のコラム記事をご覧ください。