リハビリで動きを取り戻す、楽に動くために。
脳梗塞、脳出血、パーキンソン病、脊髄損傷など中枢神経の病気は多くあります。その多くが運動障害をきたすため、リハビリが必要となります。リハビリのイメージというのは”きつい”、”つらい”、”苦しい”とお思いの方が多いかと思いますが、それはちょっと違います。
動きの巧みさを鍛える
運動はいくつもの側面から表現することができます。
- 力強さ
- 早さ
- 巧みさ
- 美しさ など
これらはどれもスポーツでの評価基準になることです。
サーカスの曲芸師、体操選手、スタントマン、彼らの動作は見ていて息をのむような動きをみせます。ここには動きの巧みさと美しさがあります。
ロシアの生理学者であり運動科学者でもあるベルンシュタインはヒトの動きの巧みさを以下の様に表現しています。
運動の巧みさは普遍で、万能な能力であるという点だ。巧みさがあれば火事で焼け死ぬこともないし、川で溺れることもないだろう。多くの異なる場面で巧みさは欠くべからざるものであり、実際に役立つ。
デクステリティ 巧みさとその発達 金子書房 ニコライA.ベルンシュタイン著 工藤和俊訳 より
のちにベルンシュタインが疑問として残した通称”ベルンシュタイン問題”と呼ばれる疑問があります。
”机の上にあるリンゴをとるのに必要な関節(肩・肘・手・指)の動き、筋肉の力加減は無数にあるのにどの様にして一つのやり方を選んでいるのだろうか?”というものです。
つまり、肩を大きく振り上げて、力いっぱい指を広げてリンゴを取ることもできますが、そんなやり方は通常選びません。もっともその時に効率の良い動き方(関節の動きや力加減)を選んでいるのです。
そしてまぎれもなく、その組み合わせを選んでいるが中枢神経です。運動の選択制が豊かであるほど運動にバリエーションがもたらされ、巧みに動けるということです。
どう鍛える?
ではどのように巧みさを鍛えるのでしょうか?
子供の時に1歳くらいで初めて手を放して歩いた、自転車を初めて漕げた、プールで泳げたその時のやり方と同じように取り組めばよいのですが、記憶がありません。
運動の記憶は、名前やエピソードなどの知識の記憶とことなり、運動の経験を通して学習しています。”運動”と動いた時の”感覚”の相互作用が中枢神経に動きの巧みさを作り上げるわけです。つまり、上手なやり方を繰り返す中で習得することになります。
上手なやり方は上手なヒトから習いますよね?
ゴルフを下手な人から教わろうという人はいませんので。
上手なセラピストの誘導、助言が必要になってくると思います。
もちろんそのための努力と諦めなないという根性は必要です。
しかし、力いっぱい、体を硬くしてまで取り組むという物ではありません。逆効果です。
軽やかに体を動かす、楽に動く、そんなイメージが持てる様に取り組むことが重要です。力いっぱいエネルギーを出し尽くすというやり方では、動きの巧みさを取り戻すことにはつながりません。
まとめ
中枢神経の障害は、筋肉のボリュームや関節の硬さに直接影響を与えるわけではありません。
そのため、運動の巧みさ、美しさなど効率を追求した動きの習得を心がけたリハビリが必要になります。