更新日:2022.04.07

ベルンシュタイン問題

「ベルンシュタイン問題」という言葉を聞いたことがありますか?

ベルンシュタイン問題とは

テーブルの上にあるリンゴを取るための取り方は数えきれないほどあるけれど、どうしてこの取り方を選ぶのだろうか?という問題です。

この問題には様々な検討されるべき事項があります。

”肩、肘手首など各関節の角度をどうするのか? ”

肩関節は球関節でとても自由度が高い。手をリンゴに伸ばすために挙上だけでなく、外転や回旋の動きも起こりうる。これだけで相当な運動軌跡が想像されるが、腕の関節は他にも肘、前腕(回内外)、手関節などあり組み合わせは膨大になる。

”各筋肉の収縮をどの様にするか?”

肘を曲げることを考えると肘関節屈筋(上腕二頭筋、上腕筋など)の筋活動をどの程度にするか、その際拮抗する肘伸筋群(上腕三頭筋)の活動をどれだけ緩めるかということがある。
生体では関節が動かないとき両群間の張力は均等になっているはずで、同じ速度で肘を曲げようとしたときにも、拮抗筋の張力が強い(筋活動が多い)状態では主動作筋は筋活動を増やす必要がある。この組み合わせも膨大になるはず。

これらの膨大な組み合わせの中から最適な組み合わせをヒトは選んでリンゴを取っていると思われます。

この組み合わせの中から選ばれた一つの運動パターンは、そのヒトにとって最も効率の良い選ばれた運動(選択運動の語源)といえます。

そのヒトにとって効率の良い運動が選択運動ですので、その患者さんが選び出力した動きが選択運動というわけではないと思います。選択性の少ない運動を出力していると考えるとよいでしょう。

ということから、リハビリテーションではそのヒト(患者さん)の運動の選択性を増やすこと、つまりは運動のパターンを増やすことを促しているわけです。

リンゴを取るのにどのパターンが良いのか今一度考えてみてください。

  • 最適な軌跡を描いていますか?
  • 手指が開きすぎていませんか?
  • 筋の収縮は適度でしょうか?

考えすぎると、テーブルの上のリンゴを見て動けなくなりませんか?
そうなんです。この運動の選択は、瞬時に行われているんです。そこが脳のすごいところです。

自分と、リンゴとの位置関係や今の自分の姿勢など様々な周辺の状況をすべてくみ取ったうえで運動の選択がなされているわけです。

最後にベルンシュタインとは ソビエト・ロシアに生きた運動生理学者ベルンシュタイン(Nikolai Bernstein : 1896-1966) のことです。

Nikolai Bernstein

ベルンシュタインは著書の中で、「冗長な自由度の克服こそが動物の運動の核心である」という結論づけていますが、この自由度の克服は容易ではありません。

まとめ

ヒトが効率良く動くために筋肉は適度な固さ(収縮活動による支持性)と柔らかさ(関節運動がおこる程度の運動性)が必要であることを、以前からベルタ・ボバースは言っています。

StabilityとMobilityどちらも活動のために欠かせない要素です。

この記事を書いた人

塚田 直樹
Rehabilitation Plus 代表 理学療法士として20年以上の経験 専門理学療法士・認定理学療法士・ボバースインストラクターとして年間50以上の研修会に登壇している