更新日:2022.03.16

振戦の種類と定義・リハビリについて解説します。

パーキンソン病、本体戦振戦、小脳症状など様々な病気で見られる”振戦”についてまとめました。

パーキンソン病のリハビリは下の記事にまとめています。

定義

振戦の定義は以下のようなものがあります。

身体の一部が、平衡のとれた位置を中心に、一平面内で規則的な律動性をもって振動する不随意運動

deject, 1914

その後、以下のような定義も見られる。

振戦とは、身体の一部(体節 body segment)が、休止状態、運動中または姿勢保持に際して、本来の平衡のとれた位置を中心に、律動的に振動する不随意的な関節運動である

平山, 2010

振戦が発現する体節が置かれた状況から休止時、姿勢時、運動時、意図動作時に分類されます。それらは、病変部や病態機序の判断手掛かりとなります。

振戦というと規則正しい律動性を持つ動きを想像しますが、本来律動性とは反復性に繰り返すことを意味する言葉で、振戦には律動性の有無は含んでいません。つまり、振戦には規則性にかける不規則なものもあります。

運動過多(ヒペルキネジ― hyperkinesia hyperkinesis)は規則的でなく、平面上の動きでもないが、反復性振幅性の粗大な不随意運動をいい、ヒペルキネジ―には振戦に加えて反抗運動の要素があります。

新線の種類

休止時(静止時)振戦

随意的な筋活動が休止した状態で現れ、十分に力が抜けた状態の四肢、体幹に発現します。一般に四肢遠位にみられることが多く、屈曲ー伸展運動として現れます。

姿勢時振戦

ある姿勢に保っているときに現れる振戦を指し、以下の3つに分けられる

  • 随意的に姿勢を維持するときに発現するもの
  • 受動的に維持される姿勢で発言するもの
  • 意図的な要因が強く影響するもので、意図するほど強く現れる振戦(企図振戦)

本態性振戦は能動的姿勢時振戦の代表的な症候で頭頚部、上肢にみられることが多く坐位で最もよく見られます。頭頚部は縦方向と横方向に振戦を示すものがあり一般に大きな振幅のものが多いとされます。本人は気づかないことも多く、指摘されても自覚がないこともまれではありません。

本態性振戦は生理的振戦の亢進という考えがあり伸張反射機構が関与しているとされるが原因や病変は不明とされています。

静止時振戦は受動的な姿勢による筋活動がおこる状態で姿勢時振戦に含まれます。

運動時振戦

身体を動かす時、その部位に発現する振戦を運動時振戦といいます。一般に振幅の大きさ、頻度とも規則性が乱れ多次元での振動になることが多いようです。臨床ではこの運動時振戦は運動失調として扱われ、小脳性運動失調にみられる動揺性、振動性の運動を指します。背景には企図振戦ががあるため、振戦の分類に残されているようです。

意図動作時振戦

運動から姿勢に至る一連の動きからなりその両者において連続的に生じている振戦のことを意図動作時振戦と表します。つまり、運動時振戦であり姿勢時振戦でもあります。

これには、企図振戦、反抗運動(振戦)、意図動作時運動過多(ヒペルキネジ―)が含まれます。これらの振戦は振幅、周波数が必ずしも規則正しくなく不規則な律動性を示し、平面上の振幅のみならず多次元に及ぶものが多く見られます。つまり屈伸だけでなく、内外転や回旋の要素も加わり四肢遠位部だけでなく近位関節も大きく関与しています。

企図振戦

企図振戦とは、「意図する動作によりその身体部位に生ずる振戦で動作開始直後から動揺し、目的に近づくにしたがって振幅は大きくなり目的到達時最大となって振戦は継続する。周波数は4~7Hzで振幅は最大30cmに達することがある。情動的緊張により増強するが、情動のみで発現するものではない。動作の休止により振戦は消失する」と定義されます(平山, 2010)。

まとめ

私の個人的見解ですが、静止時振戦、姿勢時振戦は患者本人が自覚がないことも多く、自覚的に不自由を感じていない症例も多く見受けられます。しかし、コスメティックな観点などから改善することが望まれます。

姿勢時振戦を示す症例の多くは、全体に力んでいることが多く、疲労感を伴うまでに至る例もあります。Co-contractionにより姿勢の動揺を止める為とか思われます。

また、静止時振戦を示す患者は四肢遠位部や下顎の振戦を示すことが多いものの、動作時に消失ないし減弱することがおおい印象を受けます。

意図動作時振戦として見られる企図振戦は多くの生活動作において、主に手など末梢の制御を困難にしており、意図的に止めようとするとさらに振戦が増幅する傾向にあります。

いずれの振戦においても姿勢を保つための筋トーヌスの調整と意図的な活動(今は随意運動の意)におけるトーヌスの変化の移り変わりを円滑にすることが改善につながると考えられます。

この記事を書いた人

塚田 直樹
Rehabilitation Plus 代表 理学療法士として20年以上の経験 専門理学療法士・認定理学療法士・ボバースインストラクターとして年間50以上の研修会に登壇している