更新日:2022.03.16

片麻痺者の歩き方:早く、きれいに、安全に!

脳卒中(脳出血・脳梗塞)後、歩き方の改善に満足いかない方は非常に多くいらっしゃいます。

20年以上リハビリに関わり多くの方の歩行をみてきました。きれいに歩く、上手に歩くための秘訣をこの記事にまとめて書いておきます。

この記事では以下の3点についてまとめています。

  • きれいに歩くとはどういうことか?
  • 安定性と運動性が重要!
  • 具体的にどのように対処したらよいか

体の動きが良くなることで、歩き方や、速度、バランスの改善が期待できますので、是非最後までお読みください。

きれいに歩くとはどういうことか?

健常な歩行は、しなやかで、効率が良く、動きに無駄の少ない一連の流れです。

まずはこのことを考えましょう。

この記事を読まれている方の多くはすでに歩かれているかもしれません。

しかし時に装具や杖を使用して歩いているのではないでしょうか?

杖や装具などの歩行補助具はバランスや支えの手助けになりますが、動作のぎこちなさや重さなどが”きれいな歩行”の妨げになっていることを忘れてはなりません。

きれいに歩きたいなら、装具や杖をどうやって外していくかを考えなければなりません。

病気の前の動きはしなやかで、動きの無駄の少ない歩き方だったはずです。

健常な歩行では足だけでなく手を振っているので全身を使った動きです。

安定性と運動性が大事

”歩く” ことは左右の足が交互に支えと振り出しを繰り返します。

振り出しを気にされる方がとても多いのですが、反対側の脚がしっかりと支え体が伸びていないとスムースな振り出しはできません。

上の写真は写真素材サイトからお借りした「外国人ビジネスマン」という写真です。

足を振り出している方をみると反対の足で支えて、上半身はまっすぐになっています。さらに、左右の手は力むことなく自然な様子です。この自然さが重要です。

まずは、片脚で支える力・バランス(安定性)と動きに必要な柔らかさ(運動性)を考えましょう。

安定性

簡単に言うと支えているための力やバランスのことです。これは脚だけでなく、上半身についても必要な能力です

運動性

足を振り出す際に股関節・膝・足首の動きが必要です。

支えている側も実は動いています。この支えながら動くことはとても難しいことです。

例えば足の裏がついた直後足首は下向き、股関節は曲がっていますが、振り出す直前はつま先が上を向き、股関節は伸びています。

具体的な改善策は?

足の動きをよくする

足首・足指だけでなく、足裏が硬いと体重を支えて受け止めることができません。足首は上・下だけでなく、内・外に捻る方向も動かしましょう。指は曲がることが多いので伸ばす様にしましょう。また、指を開く様にするのもお忘れなく。

足の裏は体重を支える大事な部分です。硬くなっているとタコができたり、痛くなったりして体重を受け止められなくなりますので、良くマッサージしておきましょう。足裏マッサージくらい痛くでも大丈夫です。

股関節を伸ばす

股関節が伸びにくくなり、足を後ろに残すことが苦手になりやすいです。うつぶせに寝ると股関節が伸びます。ほかの方法では、足を歩くときの一歩分くらい前後に開いて後ろ足をしっかり伸ばすのも良いです。

脚が後ろに伸ばせることは体を前に押し出す推進を生み出します。また、時計の振り子のように、振り出しの際の力を使わずに足を後ろから前に運ぶためにとても重要なのです。

一方股関節が伸びないと、股関節を曲げて脚を前に運ぶ力が必要になりますます伸びにくくなるという悪循環に陥ります。

片足で支える力を

上の写真でも説明しましたが、足を振り出すためには反対の脚が支えていなければなりません。支える力だけでなく、片足で立つバランスも必要です。

体を柔らかく

歩いているとき上半身は上下左右にあまりぶれないのが通常です。ところが杖をついたり、麻痺している脚を体を使って振り出したりしているとぶれが大きくなります。体の上に頭があるので、体がぶれると目や三半規管がゆすぶられバランスがとりにくくなってしまいます。

体は片側の脚の上でバランス良くしなやかに動けるようにしておきましょう。座って体をストレッチしたり、伸びをしたりしておくのも良い動きです。

腕から指先を固くしない

歩いているとき腕は体がぶれないように振っているのですが、ある程度早く歩かないと腕の振りは起こりません。

また、万が一ふらついたときに腕でバランスをとったり、手が支えたりできることは歩く際の自信につながります。床に手をついて四つ這いで支える練習などもとても大切です。

歩容の改善を目的としたリハビリ

60分1回のリハビリ場面を編集してまとめました。上の要素のいくつかを練習しています。1回1回の練習で着実に積み重ねるつもりで取り組むことが大切です

この1回の練習では、以下の要素を練習しました。

  • 非麻痺側の脚の運動性を改善
  • 非麻痺側体幹を伸ばす
  • 起き上がりで、体幹の動き(屈曲・回旋・側屈)の練習
  • 両下肢での支える
  • 麻痺側膝の支えを強化
  • 両足での立ち上がり

自主練習

別のページ 「理学療法士が伝える自主練習のコツ」 で30個くらいの練習を紹介しています。

まとめ

歩き方は全身をしなやかかつ効率的に支えて移動する動作です。体を隅々まで良く動かして歩き方を改善しましょう。

練習の内容については担当の理学療法士・作業療法士などリハビリ専門職にお尋ねください。個人個人にあった練習内容を紹介いただけると思います。

その他、脳卒中全般のまとめは以下の記事をご参照ください。

この記事を書いた人

塚田 直樹
Rehabilitation Plus 代表 理学療法士として20年以上の経験 専門理学療法士・認定理学療法士・ボバースインストラクターとして年間50以上の研修会に登壇している