バランス感覚を取り戻すためのリハビリで知っておくべきこと

バランスって便利な言葉で何かにつけてバランスが悪いと表現します。どのようにバランスが構成されているか知っておくとさらにバランスの悪い理由にたどり着け臨床分析能力が向上します。

今回はバランスをテーマに構成因子を考えてまとめてみました。

平衡が保たれていれば良いのか?

Rock Balancing

バランスは平衡を保つということを意味します。しかし動物は動くことが大きな特徴となっており、動くためには均衡を崩し、平衡状態から外れないと動けません。

足を広げて立ってみるとわかりやすいと思います。支持基底面が広く安定をしているように思えますが、一歩踏み出そうとすると、支持脚への重心移動がとてつもなく困難なことがわかります。

ヒトは安定と不安定のはざまを行ったり来たりして動きているといえるでしょう。

”倒れなければ良い”という考えだと動けない状況を作り出すことになりかねません。

支え(安定)ているということと、動く(不安定)が混在し私たちの動きを作っているわけです。

どう支えるか Stability

Alignment(アライメント=身体部位の配列の意)が直線的になっていることは、効率よく立つことになります。足の上に下腿・大腿・体幹・頭がまっすぐになっている状態です。
この状態を保つためには筋活動が必要ですが、良い姿勢で立つことにより少ない力で立つことを実現しています。

姿勢が崩れるとその姿勢を保つ(倒れないため)ためにさらに力が要求されます。

詳しくは抗重力筋活動について別の記事にまとめていますのでそちらをご覧ください。

どう動くか 

アライメントを良くすることが、無駄な筋収縮を少なくエネルギー消費効率を良く立つかということに重要です。

足を一歩踏み出すことを考えたら、振り出す側の脚が適度に力が抜けてくれていた方が良いのはわかると思います。

当然ですが、筋の活動がなければ動くことはできません。ここでいう動きは意識的な動き(随意運動)ではなく、姿勢制御の一部として出力される活動です。詳しくは下の記事、姿勢制御と運動制御をご覧ください。

どの様に制御しているのか

立位で前方に体が傾いた場合、以下のような感覚情報の変化が起こります。

足底にかかる圧が踵から前足部に変移する触・圧覚、下肢・体幹などの背面筋群の伸張による筋・腱紡錘からの深部知覚、そして三半規管前方への変移情報、網膜による外界との距離感(奥行き知覚)の変化が起こります。

これらはの感覚情報の変化が単独で起こることは通常はありません。感覚障害で足部の感覚がわからなくとも前には倒れず、それどころか前方への変異を起こさないように身構えるのが通常です。

感覚情報が知覚・統合されないと、その方向へは変移しないように対処します。これをバランスの代償という風にとらえます。
脳卒中後片麻痺の方が、教わらなくとも麻痺側に荷重しないような動き方を習得するプロセスはまさにこれと同じことが起こっていると考えます。

正しく変移情報を認識できることが安全につながる

全ての感覚器が情報を感知できないという状態は通常ないと思います。

バランスの変移を正しく認識する、あるいは感覚情報を正しく(どの方向にどの程度動いたか)認識できればその変移情報に基づき姿勢の修正をすることが可能となります。

バランスが悪い方の立ち姿を想像してみてください。足元をみて背中を丸くして立っているのを想像するかと思いますが、目(視覚)・前庭(三半規管)、体幹(脊柱の伸筋)からの情報を捉えにくくなります。

バランスの分類
バランスの構成要因

冒頭にお話しした通り、Alignment(アライメント)を正して情報の変移をとらえやすくすることがバランス改善の手掛かりになるかもしれません。

まとめ

主にfeedbackによるバランス、Reactiveなバランスによる制御の話をまとめました

私たちが活動するときには前述のように自ら安定を崩すことによって動き出すというFeedforward、Proactiveでのバランス制御もあります。

バランスはfeedbackだけでなく、feedforwardの側面とも併せて考える必要があると思います。