運動学的視点からみた歩行のメカニズム

以前歩行のメカニズムについておまとめました。まだ見ていない方は以下の記事を先に読むと理解しやすいと思います。

歩行分析については下の記事にまとめてあります。

この記事の続きは”神経学的視点から”をまとめる予定です。

この記事を読むことで、歩行に必要な運動学的な要素を知ることができます。また、臨床での見方を学ぶことができます。

歩行中の足部(Double Stance)

基本は足元から

立位・歩行をみるとき基本は足元から見ていきます。足から上に向かってみていくことになります。
神経学的要素を考える場合この限りでないのかもしれません、全体をまず見るということになると思います。

とはいえ、足部・下腿・膝・・・・とすべてのことをここには列挙できませんので、特に重要な足部、股関節を中心にまとめていきます。

足部

いうまでもなく、荷重を受け止め、着地(接地)の衝撃を受け入れるのが足部です。足部の構造や機能的側面を見ていきましょう。

Truss Mechanism

足部の縦アーチ(三角の二辺)と足底腱膜(三角の底辺)で構成されるトラス構造により荷重を分散しています。この三角構造をTruss Mechanismという。

Truss Mechanism

Windlass Mechanism

中足趾節関節(MTP関節) が背屈することで、足底腱膜が引かれ結果的にアーチを押し上げる。この巻き上げ機構をWindlass Mechanismといいます。

歩行中この機構はTerminas StanceからPre-SwingでMTP関節が背屈した際に足底腱膜が引かれる時にみられます。下腿三頭筋の活動を効率よく蹴り出しにつなげる役割を担っています。

Windlass Mechanism

足底腱膜とアキレス腱の連結

  • 足底腱膜は踵骨を介してアキレス腱と連結している
  • アキレス腱の緊張が、足底腱膜の緊張も高めることが報告されている
    (Cheng et al 2008)

逆に、足底腱膜の伸長は、アキレス腱の伸長にもつながることが推察され、痙縮のみられる足では下腿三頭筋やアキレス腱だけでなく足底腱膜の可動性も十分に確保する必要があります。

Rocker Function

足部の3つの回転運動により衝撃吸収から推進までを効率よく行っている。

Heel Rocker

足関節の底屈方向への回転運動による。踵接地後に 足関節の底屈により衝撃吸収をする。踵接地後、背屈筋群の遠心性収縮によりタイミングを遅らせて足部を下ろすことにより衝撃を吸収している。

Ankle Rocker

足関節の背屈方向への回転運動による。接地した足の上を下腿骨が後ろから前(後傾から前傾方向)へ動きます。この時下腿の上にある大腿や骨盤より上の上半身を前方へ推進させます。

Forefoot Rocker

Mid-Stance以降の踵離地から足尖離地にかけての、中足趾節関節(MTP関節)の回転運動による。

足部は歩行時に柔軟な状態と強固な状態を繰り返して、荷重の分散と力の伝達を巧妙に行っている

河島ら,2012

Truss Mechanism、Windlass MechanismとRocker Functionにより効率よく荷重の分散と力の伝達ができていることになります。

荷重の分散と力の伝達
荷重の分散と力の伝達

膝関節

膝が曲がっていると歩行は困難になります。過去に調べたとき30~40°曲がると自立歩行は困難になります。

では膝を伸展にコントロールするのはどの様にしているでしょうか?

大腿四頭筋は当然膝の伸筋ですが、解剖学で膝関節屈筋として学んだハムストリングス・腓腹筋も膝の伸展に関与しています。

例をあげると、ICの直前ハムストリングス遠位部は遠心性収縮になり膝の伸展を制動していることは既知のことだと思います。

また、MStからTStで下腿が前傾する際に下腿三頭筋はヒラメ筋が下腿の前傾を制動し、腓腹筋は大腿骨下部の前方へのスライドを制動しています。

股関節

股関節屈筋である腸腰筋の短縮は臨床上よく目にする問題です。歩行の中では、MStからPSwを困難にします。

大腰筋に着目すると起始部は第1~第4腰椎の椎体全面にあり、この短縮は腰椎を前方にひくようになり腰椎の後湾の可動性を低下させます。腰椎の可動性と股関節の可動性は密接にかかわっていることが多いと思います。

大腰筋が短縮している方のTStやPSwは股関節が十分に伸びないため、骨盤前景し腰椎過前弯になる傾向にああります。

歩行を考えるうえで股関節の伸展の可動性は必須です。
また、伸展域で筋活動が作り出せることも重要になります。

関節運動連鎖

多関節運動連鎖

足底(踵が接地した情報)から上に向かって筋活動が連続します。

一例を示すと、踵接地が起こると足関節だけでなく、膝・股関節・体幹の伸筋に筋収縮が一連の流れの様に起こります。運動学の教科書などでは”踵接地が股関節・体幹伸筋の働きを促す”と表現されています。

筋収縮の一連の流れは随意的に構成されているとは考えられず、末梢からの感覚情報(この例では、踵の皮膚感覚や下腿の深部知覚)と脊髄の神経ユニットの働き(CPG)が重要な役割を担っていると考えられます。

まとめ

歩行を構成している要因を運動学的側面からまとめました。

リズムやパターンについては神経学的な側面からの考察が役立つと思います。

神経学的視点から歩行についてまとめた下の記事をご覧ください。

また、歩行全般のまとめについては以下の記事にありますのでご覧ください。