更新日:2022.04.07

臨床的視点からみた歩行分析

以前歩行のメカニズムについて概論をまとめました。今回は、分析的視点から歩行について歩行周期に照らし合わせながら説明します。

歩行周期

ランチョ・ロス・アミーゴ国立リハビリテーションセンター(RLANRC)の歩行分析室による歩行周期の記載は以下のように分類されている。この歩行周期はビデオカメラやVICON、床反力計、筋電計などにより観察された動きを標準化されたもので、今日のこの領域でのスタンダードとなっています。

歩行分析については以下の書籍が参考になります。いずれも日本語版があります。

  • 観察による歩行分析 / Kirsten G¨otz‐Neumann(著)
  • ペリー歩行分析原著第2版正常歩行と異常歩行 / Jacquelin Perry(著)
ランチョ・ロス・アミーゴ国立リハビリテーションセンターによる歩行周期の分類
ランチョ・ロス・アミーゴ国立リハビリテーションセンターによる歩行周期の分類 より

Stance Phase

Initial Contact 初期接地
Loading Response 荷重応答期
Mid-Stance 立脚中期
Terminal Stance 立脚終期
Pre-Swing  前遊脚期

Swing Phase

Initial Swing 遊脚初期
Mid Swing 遊脚中期
Terminal Swing 遊脚終期

※ 原著では、Pre-Swing(前遊脚期)は遊脚相に割り当てられています。観察上前足部が接地していることから、ここでは、立脚相に振り分けています。

各相の詳細な説明は原著を参考にされると良いと思います。歩行の改善を目標に取り組むことを考えると避けて通れない学習領域です。

歩行分析の視点

また、歩行において問題と言えるのが左右下肢の各相の分析だけでなく、歩行という一つの行動を分析することです。つまり以下の点についての観察が必要です。

  • 各相の分析
  • 上半身との関連(HAT:Head, Arm, and Trunk)
  • 左右下肢の関連

各相の分析

各相の役割を理解することは一連の効率良い歩行を考えるうえでとても重要です。例えばInitial Contact(初期接地)の役割は以下の通りです。接地した後次のLoading Response(荷重応答期)で衝撃を吸収するためのポジションに置くことやそのポジションを認識することとなります。

前後の相と機能的につながりを持ち各相が役割を持っています。ですので各相それぞれの役割を知ることが重要です。それぞれの相における関節角度や筋活動はこの役割を知ることで理解が深まりますので役割の理解が先決です。

上半身の関連

歩行分析の著書では骨盤から下をLocomotor、骨盤を含むそれより上をPassengerと書かれています。ここでいうPassengerは推進の動きをしているLocomotorの上に乗っているという解釈ですが、実際は一部違います。

歩行時の上半身の分析はCOMが上下左右に大きく動き過ぎず頭部が降られないようになっています。上部体幹は骨盤と反対方向への回旋の動きがあり、上肢も同側下肢とは反対方向へSwingしています。

ただ、Lcomotorの上に乗っているわけではなく、ある一定速度以上(2.4km/h程度)になると上肢のSwingが見られ始めます。

HAT(Head, Arm, Trunk)は骨盤の上にのっているだけでなく、歩行の推進やバランスの保持など歩行を補うこと以外にも上肢によるものの把持・操作、頭部の役割として見る・話すなどいくつかの別の機能を持っています。

上半身が歩行において適切な役割を保てているかの観察が必要です。

左右下肢の関連

左右の下肢の関連性は非常に重要です。臨床上右麻痺の方の左遊脚時間は短縮傾向にあります。この際左側の問題というより右下肢の立脚の問題に注目する必要があると思います(あくまで一般論です)。

つまり観察上どちらか一方に問題が見えたとしても即その現象を問題として取り上げることについては考え直した方が良いと思います。ここで歩行全体を分析し前述のように左右の関連を見ることで問題が絞れてくるわけです。

誤解の内容に書くと、非麻痺側に問題がないわけではなく常に非麻痺側に荷重していると麻痺側のInitial Contactにおいて脚の位置を正しく認識できずその後荷重ができないことになります。

また、全歩行周期のうち10%×2回Double Stance(両脚支持期)があります。この相の特徴は主にに以下の点になります

  • 一側下肢から他側への荷重の移り変わりが起こる
  • 体幹の回旋が反対方向へ切り替わる

荷重の移り変わりは両下肢が2つの別の相にありそれぞれ別の役割があります。もちろん合わせて前方への推進(歩行)という一つの目標に向かって活動していることに相違ありませんが。

両脚支持の際一側下肢が最大限前へ、他側は最大限後ろにあることになります。骨盤から上に向かって起こる骨盤・腰椎・胸郭・頸椎・頭部という一連の回旋の動きはこの時点から反対方向への回旋になります。

Double Stanceの問題は左右下肢の関連、体幹のAlignmentを見ておくと良いと思います。

まとめ

以上歩行分析についてまとめました。できるだけ臨床的な視点から書いたつもりですが網羅的に書いていませんので参考にして分析能力を発展させていただければと思います。

歩行全般のまとめはこちらにありますので、合わせてご覧ください。

この記事を書いた人

塚田 直樹
Rehabilitation Plus 代表 理学療法士として20年以上の経験 専門理学療法士・認定理学療法士・ボバースインストラクターとして年間50以上の研修会に登壇している