更新日:2022.04.07

睡眠の役割は? 体に及ぼす影響はなにか?

睡眠は何のためにとるのでしょうか?

  • 疲れからの回復
  • 記憶の整理
  • 運動の学習

様々な理由が考えられますが、睡眠を細かく見てみると睡眠が何のために行っているのかがわかってきます。

睡眠学習

年齢と睡眠時間

年齢と共に睡眠時間は短くなります。

幼児期は実に10時間近くの時間を睡眠に費やしますが、高齢者は5~6時間と半分程度の時間しか眠りません。

様々な見方がありますが、日中の運動量の低下や夜間トイレで目が覚めるなど睡眠の質の問題などが有力視されています。

National Giographicの研究で面白いものがありましたので引用します。
ナショナルジオグラフィック 睡眠の都市伝説を斬る

これによると睡眠時間は短くなりますが浅い睡眠はあまり減っていません。

一方深い睡眠はかなり減り、レム睡眠も少しずつ減ってきています。

この睡眠の種類の違いが色々と鍵を握っていそうなのでその辺を説明します。

ナショナルジオグラフィック「睡眠の都市伝説を斬る」より引用

睡眠の種類

睡眠には、レム(REM)睡眠、ノンレム(Non-REM)睡眠があります。

さらに、深い睡眠(徐波睡眠)、下の図でStage3-4に区別されます。

通常、REM睡眠は90分周期で訪れると言われ、睡眠の後半になるにつれ増える傾向にあります。

ではレム睡眠、ノンレム睡眠それぞれの特徴を見てみます。

レム睡眠

REM = Rapid Eye Movement、早い眼球運動を伴った睡眠という意味です。

寝ている方の顔をじっと見ていると、まぶたの下で眼球がキョロキョロと動いているのを見たことがある方も多いかと思います。

REM睡眠の際に夢を見ると言われます。

レム睡眠中は体動が少なく、エネルギー保存の役割を担っているといわれます。

つまり体力の回復のための睡眠です。

また、学習の定着のためにはレム睡眠が重要と言われています。

ノンレム睡眠

Non-REM睡眠はREMを伴わない、眼球が動いていない睡眠のことです。

ノンレム睡眠は変温動物が脳を含む全身の温度を下げ休息する古い睡眠といわれています。

また、記憶の固定をするとも言われています。

睡眠と学習

レム睡眠・ノンレム睡眠どちらも学習に関わるようですが、どのような違いがあるのでしょうか?

睡眠と学習の関係は数々の研究がなされており、いくつかのものを抜粋して記してみます。

  • 無意味の単語の記憶課題で覚醒群は8時間後にほとんど忘れたが、睡眠群は半分の記憶が維持(924, Jenkins, Dallenbach)
  • 胎児期の脳における新しい回路形成にREM睡眠が関与(1966, Roffwarg)
  • 外国語やモールス信号、トランポリンの運動の学習後の睡眠でREM睡眠が延長するとの報告(1970-1980s)
  • 睡眠は大脳皮質における学習による記憶の固定の過程に関与する (内山,  1998)
  • 学習後の記憶形成期には一過性にレム睡眠が増加する。
  • レム睡眠を遮断すると学習が妨げられる (Karmi, 1994)
  • 楽器の演奏のような運動学習はノンレム睡眠中に睡眠紡錘波の出現が高くなり器用さが増強される。 瞬間視によるパターン識別能力の獲得には睡眠前半のSWSの長さと後半のレム睡眠の長さの積に比例し、SWSとREM睡眠の相乗効果が重要(2000, Stickgold R, et al)

まとめ

エピソード記憶や言語の学習にはレム睡眠、運動学習はノンレム睡眠が重要ということになりそうです。

深い眠りの後にレム睡眠が訪れ、睡眠後半になるにつれレム睡眠が多く生じることを考えると睡眠の質が重要とです。

日中適度に体を動かし、豊かな経験をすることが良質な睡眠をもたらし効率の良い学習をもたらすといえます。

一夜漬けの無力さや文武両道の大切さを改めて感じますね。

この記事を書いた人

塚田 直樹
Rehabilitation Plus 代表 理学療法士として20年以上の経験 専門理学療法士・認定理学療法士・ボバースインストラクターとして年間50以上の研修会に登壇している