更新日:2022.03.16

姿勢制御に必要な感覚情報の入力・処理過程はどうなっているのか?

姿勢制御には、Orientation(姿勢定位)とStability(姿勢平衡)の2つの要素からなる。

Orientationは日本語に訳すと、”定位”、”指向性”などの意味をもつが、私はあえて”オリエンテーション”という様に努めている。その理由として、定位という表現はひとところにとどまるStaticなイメージを、指向性はベクトルを示しDynamicさを持つ表現であって、どちらか一方の意味として伝わると誤解をしょうじるためである。

姿勢制御を構成する2つの要素

Postural Orientation 姿勢定位

身体各部位の位置を他の部位や環境に適合させることで、重力の向き(鉛直線)、視覚で認知される垂直方向、支持面に対して配列される。Postural Stabilityと表現されることもある。

重力に対抗する力は、足を押しあげる床反力(ground reaction force)である。そして,正味の床反力は,圧力中心(center of pressure)と呼ばれる地表の仮想的な点で発生する。

Postural Equilibrium 姿勢平衡

バランスの維持を意味し、例えば重力のような外力に対し能動的に抵抗する能力を意味する。

身体は力学的に不安定で平衡を維持するために神経系は、質量中心(center of mass)に対する身体の回転や質量中心の位置と動きを制御しなければならない。

姿勢制御の中枢組織化

JeanMassion, 1994, Postural controI systemより

この図は、姿勢制御の中枢器官に関わる主な要素の要約です。2つの組み合わせで、1つは身体分節のオリエンテーション、もう一つは全身の安定性(平衡制御)です。これらの詳細な情報と外乱と内乱に対するマネージメントは、身体の運動と配列、垂直と参照枠の表現型などいくつかの要素を含み、ボディーシェーマや身体の内部表象の基本となります。加えて、姿勢ネットワークは姿勢課題の実行と比較しています。多重感覚入力はボディーシェーマの構築に使われます。これらの入力もエラーとして実行される。実際の姿勢と事前に取り込んだオリエンテーションと安定性の間絵の不一致の評価によって気づく。
エラーメッセージのある姿勢反応は随意運動と関連するAPAとしてよくしられ、一つもしくはいくつかの身体分節と姿勢ネットワークをとして影響する。姿勢の応答と予測の実行は限局的なフィードバックによって直接制御されています。

JeanMassion, 1994, Postural controI system

Massionは多重感覚入力はボディーシェーマの構築に使われると表現しており、目的動作の背景にある感覚入力の重要性を示した。

多重感覚入力

姿勢制御に必要な感覚は、視覚、迷路(前庭感覚)、固有感覚、皮膚、重力受容器が挙げられている。

視覚

網膜に投射された光をもとに地面や床の水平、壁や柱の垂直、奥行きを知覚している。

しかしこれは概念的にとらえており本質的に水平や垂直を認識する機関ではないことを注意するべきである。

天井が水平だったら、こんなことにはなりませんよね?

(左右にいる人は私です。)

熱海トリックアート迷宮館

前庭

頭部の垂直と傾き、加速を認識します。

固有感覚・皮膚

体性感覚として、身体各部の位置関係や支持上体を認識する。

重力受容器

腹部内にある、重力のかかり方を認識する受容器により身体が垂直にあることを認識しているといわれている。

感覚の統合

単一の感覚情報で身体の状況は把握できず、統合することで身体の今ある状態が認識できる。

視覚で垂直を捉えて立つことなど単一の感覚情報をもとに姿勢の制御を行うことは困難である。

また、頭部が常に傾いている状態でいるとその状態で頭位が安定していると中枢神経が判断(チューニング)し、正常な頭位になった際に垂直でないと認識するなど、外見上の姿勢と認識されている姿勢が同一であるとは限らない事もリハビリを行う上では非常に重要である。

感覚情報をうまく統合していくことで身体の状況を認識し姿勢の安定やオリエンテーションにつながると考える。

姿勢制御に必要な感覚入力についてまとめてみました。

姿勢制御と運動制御については以下の記事をご覧ください。

まとめ

姿勢制御には多重感覚入力が必要です。さらにそれらは均一ではなく必要に応じて優劣を選択されて身体の平衡維持や姿勢保持に貢献しています。

セラピー場面に置いて視覚刺激の在り方を考えるときは閉眼することと、ついたてなどで遮断することの違いについても考慮することが必要です。

ニューロリハビリの基礎知識についてその他の情報は以下にまとめていますので合わせてご覧ください。

この記事を書いた人

塚田 直樹
Rehabilitation Plus 代表 理学療法士として20年以上の経験 専門理学療法士・認定理学療法士・ボバースインストラクターとして年間50以上の研修会に登壇している