更新日:2022.04.07

24時間のマネージメントを考えたリハビリ

脳卒中後のリハビリでは、能力改善に加え機能獲得のための学習にも目を向ける必要があります。効率よく学習するためにはリハビリの時間だけでなくその他の時間の過ごし方についても考えておく必要があります。

この考えはボバースコンセプトの中では古くからあり、以下のことを考える必要があります。

  • セラピーの調整
  • 自主トレーニング・ホームプログラムの設定
  • 食事・入浴などのプラン
  • 睡眠

以上の事すべてがうまくいったときに効率よく機能改善が進むと考えられます。この記事では一つずつ解説したいと思います。

ボバースコンセプトについては以下の記事にまとめています。

セラピーの調整

リハビリには専門職である、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが関与しています。

各リハビリ職の実施内容と目標を相談しプランを立てる必要があります。

例えば、嚥下障害の方であれば言語聴覚士による嚥下練習の後に昼食、その前に姿勢制御の改善を計画するなど考えられることはいろいろあると思います。

入院中のリハビリでは上記のようなことが考えられますが、在宅でのリハビリ(訪問リハビリ)だったら、これにくわえ鍼灸師や柔道整復師らの関与があることも珍しくありません。

私は自費リハビリ分野なので、介護保険のリハ職の方と一緒に仕事をすることも多く必ず、主治医も含め連絡を取っています。全ての職種がうまくスケジュールできることは難しいのですがそれでも協力体制が強まり目標の共有などメリットが多くもたらされます。

自主トレーニング・ホームプログラムの設定

仮に入院中で9単位、3時間リハビリをしていたとして残りの時間をどう過ごすのかはとても大事なことです。8時間寝て、食事・入浴などに6時間時間が必要だとしても10時間は時間があります。この時間をどうやって機能回復につなげるかはとても重要なことです。

3時間の集中リハビリを行い、のこり10時間寝てテレビを見ていたらどうでしょう? 良いわけありませんよね。ということで、自主トレーニング、セルフマネージメント、ポジショニングなどのアイデアが必要になります。

自主トレーニング

自主トレーニングのメニュー例
自主トレーニングの一例

リハビリの時間にできたことを反復したり確認することができます。これは一般的によく行われていることかもしれませんが、毎回リハビリの内容が異なりますので毎回違う内容の自主トレーニングを伝えるべきだと思います。

毎回写真を撮ってきれいにラミネートしてお渡しするというのは物理的に不可能ですので、口頭でも手書きでも伝えるべきです。リハビリが進んでいるのに古い内容を漫然と繰り返さない異様にするべきです。

例えば今日の練習でかかとに荷重しまっすぐ立つことを練習したのであれば、壁を背にして踵に荷重してお尻・背中・頭を壁につけ背筋を伸ばすことを伝えたらよいと思います。

このように毎回毎回アップデートされる自主トレーニングが重要です。

セルフマネージメント

セルフマネージメントとケア

人によっては足にタコができたり、麻痺している手が開かなくなったりすることがあります。また、皮膚が硬くなったり逆に弱くなっていることもあります。

このような場合に手を洗い自身の手の状況を管理することが手への注意を向けることにつながります。時々手のひらに汗をかきふやけた手をしている方がいますがこのような手では手を使うどころではないからです。

また長期間荷重していない踵は皮膚が軟化し体重を支えると痛みを生じることもあります。かかとにクリームを塗り支える練習をするなど身体のマネージメントが必要なことも少なくありません。

タオルでこすったり、クリームを塗ったり爪を磨いたりとマネージメントしなければならないことは結構あります。

ポジショニング

ご自身で動いたり、管理することが難しい方に対しても、この時間の活用をあきらめることはありません。ベッド、車いすなどにいる時の姿勢を少しでも自身で管理できる姿勢にすることが重要です。

ベッドアップ(ベッドで頭を起こした姿勢)なら頭部を体とまっすぐに保つ筋活動が要求されます。車いすに座ることは脊柱を垂直に支える筋活動が作られ、お尻や太ももなどの支持面への荷重を促す役割があります。少し前かがみでテーブルに手をついた姿勢なら足の裏に荷重し下肢が支える状況を作ることもできます。

食事・入浴などのプラン

食事・入浴などの直後は疲労していたり、すぐにリハビリを行える状況でないことが多いです。健常人だって食後、入浴後すぐに体を動かすのは億劫なものです。この辺は皆様気にされていることかと思います。

食事の時間はおおむね朝・昼・晩と1日3回の方が多いかと思います。栄養状態や偏食はいかがでしょうか? リハビリをするために体力をつけることも大事ですが病気の再発予防の為にもしっかりとした食生活が必要です。

脳卒中後の入院患者さんは意外とおなかがすいたと言いません。運動量が不足したり様々な原因から起こることですが、食事は栄養補給だけでなく文化的な営みの一つです。食事が楽しみになるのも大事な目標だと思います。

入浴も身体の状況を保つために必要です。衛生的に保つことが重要なもくてきですが、実は体を洗うことは身体の隅々まで触られ刺激になります。体を洗った後はゆっくりと落ち着いた状況で寝る、座っていると身体の感覚の変化に気が付いたりすることがあるようです。

睡眠

睡眠は体力の回復だけでなく、学習のためにも重要です。特に睡眠職は体力回復、REM睡眠はエピソード記憶などの学習、non-REM睡眠では運動イメージ(手順など)の記憶をしていると言われています。

睡眠時間が短いと睡眠時間の後半のREM睡眠やnon-REM睡眠が十分に得られず学習効果が乏しいことが証明されています。睡眠が体にもたらす影響や学習との関係についての詳細は以下の記事にまとめています。

まとめ

タイムテーブルの例

リハビリの時間だけがリハビリではなく、生活全体を見直しながら機能獲得していけるように計画する必要があります。

24時間のプランをクライアントにとって効率よくリハビリが進むようにタイムテーブルを作るのも良いと思います。

リハビリの時間に得られた効果を持続しさらに学習し効率的に進められるように計画することが大切です。このためにクライアントを中心にメディカルスタッフだけでなくごかぞくもチームに加えてのリハビリ展開が必要だと思います。

この記事を書いた人

塚田 直樹
Rehabilitation Plus 代表 理学療法士として20年以上の経験 専門理学療法士・認定理学療法士・ボバースインストラクターとして年間50以上の研修会に登壇している