更新日:2022.03.16

運動麻痺の改善方法について考える

脳卒中や脊髄損傷などの”麻痺”について、上位運動ニューロンの障害による問題とそれに付随して起こる周辺問題についてまとめました。

この記事では、中枢神経疾患による筋活動の問題と背景について説明していますので、神経疾患の捉え方と解決策が広がります。

その問題本当に問題ですか?

中枢神経疾患の方に、筋力が弱い(随意的に力が入りにくい)から筋トレをするという発想は学術的に矛盾があります。

「筋収縮が乏しいから、やっている」、「筋を動かさないと短縮がおこるから」と言われる方がおられると思いますが、そうなった原因は何でしょうか?

本気で改善を考えるなら原因を追究しましょう。

麻痺がおこると筋活動は健常な状況と異なり力が弱くなります。放置すれば筋の短縮や関節拘縮も起こってきます。

ここで気づかれた方もいるかと思いますが、一次的問題 (Primary) と二次的(Secondary)な問題があります。

一次的問題に起因しておこるのが二次的問題なので、二次的問題だけにアプローチしても根本が解決していなければ再び二次的問題が起こるはずです。

何がプライマリー(一時的問題)か?

中枢神経の障害により麻痺がおこるということは、筋に問題が生じているのではなく中枢神経から脊髄灰白質第9層にある運動ニューロンに運動指令が下降して伝達されないことが問題です。結果として筋収縮が起こらなくなっています。

問題は運動指令の伝達であり、その結果として筋収縮が起こらないということです。そのため冒頭にお伝えしたように、単純に筋トレではうまくいかないわけです。

筋緊張に影響を与える因子

どのような要素が筋の緊張に影響を与えているかという物を図示しいたものがこちらです。

筋緊張に影響を与える因子

この図は、正常な状態の筋への影響を示したものです(Lin et al, 1994, Dietz, 1999)。

今回中枢神経疾患ということで考えると左側の要因について考える必要があります。根本的な問題は右側の非神経学的要因ではありません。非神経学的な問題があるとしてもそれは二次的なものです。

とはいえ、尖足拘縮で踵が付かない方の支持性を改善しようとすると拘縮や底屈筋の短縮が邪魔し下肢が支持するための運動指令(単純にいうと、下肢が支持するために必要なCo-contractionを作る筋収縮の指令)は出力されないと思います。

この例であれば、踵の接地や足関節を動かすバランスの足関節戦略などを使って解決していくのが良いかもしれません。

もちろん発病直後は日神経学的要因は少ないのですが、経過を追うごとに不動などによる二次的に問題が起こると思いますので双方を考えたリハビリが必要になります。

セカンダリーへのアプローチは無意味?

筋収縮を促すのは無意味かというとそうではありません。低周波などで筋収縮を作り出すことは、筋の形状や弾性などを保ち、短縮や関節拘縮などを防ぐことにつながります。とはいえ、いつまでこのセカンダリーへの対処に時間を割くのでしょう。

健常な生体では中枢神経からの運動指令により(実際はそれだけではないですが)筋が収縮するため、どちらにアプローチするべきかといえば、脊髄の運動ニューロンに運動指令を到達させることへのアプローチが優先度が高いでしょう。

雨漏りしているとき、バケツを置いても屋根を直さなければだめですよね? そういうことです。
原因となっていることを探り、直した方が解決に向けて近道ということになります。

原因を直すことが必要

解決方法

どうしたら、上のことを解決できるか、ズバリお伝えします。

様々な”感覚ー運動の経験を通して適切な運動指令の出力を獲得する”しかないです。

そのために筋の長さや、動く感覚、バランスなど様々な側面から動きを分析していくのが一番の近道だといえます。

試行錯誤の中で自分と対象者に合った方法を見つけていくのが、唯一の方法です。

患者・利用者だけでなく私たちも頭を使って解決方法を模索していくという共同作業が重要です。

この記事を書いた人

塚田 直樹
Rehabilitation Plus 代表 理学療法士として20年以上の経験 専門理学療法士・認定理学療法士・ボバースインストラクターとして年間50以上の研修会に登壇している