更新日:2022.03.16

随意運動(運動制御)と姿勢制御の脳内情報処理プロセスを解説

随意運動と姿勢制御の生成プロセスについて以前まとめました。

今回は姿勢制御と運動制御の実行と調整プロセスについてまとめました。

随意運動と姿勢制御の信号は異なる下行路を伝達され骨格筋の活動を起こします。姿勢制御は随意運動の100~300m秒前に出現しています。

姿勢制御と運動制御の下行性シグナル生成プロセス

運動の意図

運動の意図は、外界の認知や内部欲求(生理的現象や情動)によって惹起されます。内部環境・外部環境の変化が私たちが行動・運動を起こす意図になるわけです。

運動の意図

運動の計画

前頭連合野は私たちが社会に適応した生活を送るうえで必要とする、理性・社会性・人格を構成しています。前頭連合野は基底核・小脳の認知ループと相まって運動の計画を立案しています。つまりどのような行動をすれば社会的にふさわしい行動であるかを計画するわけです。

運動の計画

運動の生成

例えばドアを開けようとしたとき、ドアノブの形状によってノブの握り方が変わります。つまり、過去に経験した動作によってどのような手の構えが動作に適しているかを照らし合わせ抽出しています。大脳基底核・小脳に過去の行動・運動の記憶が貯蔵されていると考えられ、運動前皮質との運動ループ(閉鎖回路)で構成されます。

運動の生成

運動の実行

生成された運動計画をもとに、姿勢と運動の実行を行います。姿勢の制御は運動前皮質から基底核・脳幹へと投射(内側運動制御系)され随意運動よりも先に骨格筋に出力されます。その100~300m秒後に随意運動は一次運動野から皮質脊髄路を下行(外側運動制御系)し発現しています。

運動の実行

運動の調整

事項された運動は運動中も運動後も感覚のフィードバックにより調整されています。つまり体性感覚情報は脊髄小脳路を伝達され、実行した運動の適応的な調整を行っています。

運動の調整

姿勢と運動の制御についてまとめました。

両側性に支配を受ける姿勢制御

姿勢制御は両側性支配

それでは、臨床的に脳卒中片麻痺の方がどうなっているのかを考えてみます。

内側制御系は主に体幹、頸部や四肢近位筋を支配しており両側性支配であるといわれています。

その両側性支配はどの様に出力されているのでしょうか?

運動前皮質から基底核・脳幹に投射された姿勢制御のシグナルは、網様体脊髄路では同側性支配・両側性支配と様々です。基底核から脳幹の支配については調べましたがはっきりとしたことがわかりませんでした。そのため図中は点線と?で記しています。

脳卒中患者の姿勢制御と運動制御

左の大脳半球に障害を負った右片麻痺の方を考えてみると、右半球からの制御により両側の体幹が機能するかのように考えられます。

左半球からのシグナルが両側体幹を制御していた分については弱化が起こっていてもおかしくありません。

一側の障害では姿勢制御の能力はある程度保たれるとも言えますが実際にはそうでないことが多いです。

片麻痺なのに非麻痺側の体幹筋が弱い方がいるのはこのためだと言えます。

軽度の片麻痺であった方が、反対側の大脳半球に小梗塞を起こすことによって途端に座位保持も困難になるということを何例も見てきました。

随意運動自体はさほど悪くないにもかかわらず姿勢の保持が困難になることがあります。

下行性制御だけでなく姿勢制御のための感覚フィードバックなども考えてリハビリを進めることが良いという印象を持っています。

まとめ

最後に、この一連の流れの解説動画をYouTubeにアップしてありますのでご覧ください。

この記事を書いた人

塚田 直樹
Rehabilitation Plus 代表 理学療法士として20年以上の経験 専門理学療法士・認定理学療法士・ボバースインストラクターとして年間50以上の研修会に登壇している