歩行のリハビリを歩行周期・事例別に詳しく解説
脳梗塞、脳出血、脊髄損傷など、種々の疾患により歩行機能の改善を希望する患者さんはかなりの割合になると思います。歩行が成り立つ仕組みを知ることで、リハビリの進め方が画一的でなく様々な視点からアプローチしていけると思います。この記事では、歩行の獲得及び改善に向けたリハビリについてまとめています。
二足歩行とは
ヒトの歩行の特徴は、二足歩行であること、上肢が自由になった、頭部が高い位置に来たことがあると思います。
二足直立は四つ足動物の移動様式と比較し不安定さの反面、前足が支持から解放され道具の使用を可能にしています。また、頭部が脊柱の上に来ることによって遠くを見渡せるようになったり、咽頭が曲がったことで呼吸音を反響させ音声を手に入れたと言われています。
このことから、ヒトが二足歩行するために必須の要素を考えてみると、以下の事が言えると思います。
ヒト二足歩行の特徴
ヒトの二足歩行は重心を高い位置に保ったまま支持面を片脚に交互に移すという極めて不安定な動作です。
この様な歩行のためには、立位で重心を高く保つための筋活動とそれお維持・修正するために身体各部にある感覚器の役割を理解することが重要です。
ヒトの歩行は二足直立で重心を高く保ったまま移動することが特徴ともいえます。そのため、四つ足動物と違った抗重力活動が要求されることになるのです。「抗重力活動」についてはこちらの記事にまとめています。
四つ足から二足に進化したことで不安定になったヒトは、足底の皮膚、下肢の筋(筋紡錘・腱紡錘)からの感覚情報だけでなく視覚、前庭覚など複合的な感覚情報を基に平衡を維持しています。
立つために必要な感覚情報とその処理をまとめた記事「立っている感覚」も是非お読みください。
歩行周期各相における役割
歩行周期の分類はランチョ・ロス・アミーゴ方式による分析が用いられることが多く各相の役割と歩行周期全体流れを包括して分析することができます。
たとえば、Doubule Stance Phase(両脚支持期)は両脚間で荷重の移動がなされますが、この時の重心位置は歩行周期中で最も低くなっています。ですが、両脚の足底が同時に設置しない様に、後ろ脚がつま先接地、前脚が踵接地になることで重心の上下動を少なくしています。歩行周期中の重心の上下動が少なく抑えられることから、上半身の機能である上肢機能や視覚探索、音声コミュニケーションの影響を軽減しています。
歩行周期における各相の役割を理解することと、その際の身体各部の筋活動、関節運動、感覚入力などがどのようなっているのかはとても重要なポイントです。
以下に歩行分析のまとめ記事「臨床家に必要な歩行分析のスキル」があります。
歩行のメカニズム
歩行を司る筋・骨格システム、感覚システム、神経システムなどの働きについてはあまりに膨大になるために下記の記事を読んでください。
「歩行のメカニズム」は以下の記事に簡単にまとめてあります。
歩行の運動学的側面に着目した「運動学的視点から歩行のメカニズムを考える」はこの記事。
神経学的側面についてはこちら「歩行のメカニズムを神経学的視点からさぐる」にまとめています。
神経学的側面の中で注目するべき機構の一つがCPGですが、基本的な反復運動を作り出すといわれています。CPGは歩行だけでなく、咀嚼や呼吸などの反復する動きに関与しているといわれています。ヒトの二足歩行については「リズミカルな歩行をCPGから考える」の記事にまとめています。
事例のタイプ別リハビリの例
疾患特性や個人因子によってリハビリの行い方は様々なアイデアがあるかと思います。
ここでは、いくつかの事例の解説を記しています。
脊髄の障害による「痙性歩行のリハビリ」の例を以下にお示しいたします。
脊髄の障害は運動プログラムの生成過程において、運動出力の組み合わせに問題があるとされます。筋の収縮の強さやタイミングなどの生成の問題と捉えられます。
脳出血後片麻痺のリハビリの例については、「脳卒中片麻痺者の歩行獲得へ向けたリハビリの取り組みをご紹介」という記事で動画と共に紹介しています。
通常脳卒中のケースは姿勢制御と運動制御双方の問題があります。このケースでは体幹を直立に保つ(姿勢制御)が困難でした。
まとめ
”歩行”を様々な側面から考えまとめてみました。
歩行を構成する以下の要素について理解いただけたかと思います。
- 運動学的側面は筋骨格系の働き
- 神経系では歩行のパターンやリズム
- 感覚入力がバランスや姿勢の制御に及ぼす影響
歩行の問題を抱えた事例を担当された際は今一度各側面から問題点の抽出をしてリハビリプランを見直してみてはいかがでしょうか?